水路の改修は2通りの方法で実施した(図4)。1つの方法はU字フリュームをベンチフリュームに入れ替えて、横幅を500mm(ミリメートル)から1000mmへ2倍に広げた。ベンチフリュームは高さよりも横幅のほうが長い構造の溝で、さほど強度を必要としない農業用水路には多く使われている。
もう1つの方法は山林の中に古い石積みで造られている区間をモルタルで全面塗布して補強した。モルタルはセメントに砂を混ぜた建築材料で、砂利も加えるコンクリートと比べると高価だが、塗布面が滑らかになって水が流れやすくなる。
このほかに農業用水路の流量を安定させるためのヘッドタンク(上部水槽)を鉄筋コンクリートで全面的に改修した(図5)。小水力発電では水路を流れるごみが水車発電機のトラブルを引き起こすことがある。その防止策として、ごみを除去する除塵機をヘッドタンクに据え付けた。
さらに水車発電機まで水を送り込む水圧管路を敷設したほか、水車発電機を収容する建屋を新設して、小水力発電所が完成した。このように既存の農業用水路を改修して小水力発電に活用すれば、全体の建設費を低く抑えることができる。と同時に水路を共用することによって、農業用水路の維持管理費の軽減にもつながる。
発電所を建設・運転する事業者は飛島建設とオリエンタルコンサルタンツの2社による共同体である(図6)。両社が建設・運転費用を折半で負担する。地元の中津川市は開発の許認可などで支援した。落合地区は水路の使用許可を与える代わりに、補修・清掃点検業務を請け負って収入を得ることができる。
落合地区は江戸時代に東京と京都をつなぐ中山道の「落合宿」として栄えた場所でもある。小水力発電事業に参画したオリエンタルコンサルタンツは落合宿の観光資源を生かして、地域の活性化に取り組んでいく方針だ(図7)。電気自動車の導入や木質バイオマス燃料の製造などを通じて環境保全や防災対策にも役立てる。
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