電力会社から乗り換えは68万件に、企業向けのシェアは8%台後半動き出す電力システム改革(59)(2/2 ページ)

» 2016年04月27日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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小売電気事業者は286社に拡大

 家庭を対象にした小売の自由化に注目が集まる一方、企業・自治体を対象にした市場でも自由化の効果がようやく表れてきた。企業や自治体が利用する特別高圧・高圧部門は2005年度までに段階的に自由化を実施したが、東日本大震災の以前には新電力のシェアは3%程度に過ぎなかった。震災によって電力会社の電気料金が値上がりした結果、割安な新電力に切り替える企業・自治体が全国各地で急速に拡大している。

 最近の2年間の状況を見ると、2014年度には4〜5%台だった新電力のシェアが2015年度には一気に6〜8%台へ上昇している(図3)。小売全面自由化に向けて新規に参入した有力企業の影響も大きい。2016年2月には実際に電力を供給した事業者数は127社にのぼった。電力の需要が増える冬のピークにもかかわらず、シェアは8.6%に拡大した。1年前と比べて3ポイントも上昇している。

図3 企業・自治体を対象にした特別高圧・高圧部門の新電力の販売シェア(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 従来の新電力(特定規模電気事業者)は4月1日から登録制の「小売電気事業者」に区分が変わり、家庭向けの電力も販売できるようになった。4月18日の時点では286社が小売電気事業者として登録を済ませている(図4)。この中には電力会社10社も「みなし小売電気事業者」として加わった。

図4 小売電気事業者286社(2016年4月18日時点)の業種別一覧(上と下の画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 小売電気事業者に登録した286社を業種別に見ると、最も多いのはガス会社だ。LP(液化石油)ガスと都市ガスを合わせて51社が登録している。このほか再生可能エネルギー関連の開発・販売を手がける事業者も44社にのぼる。

 ガス会社は電力とセット販売に注力する一方、再生可能エネルギーの事業者は地域で発電した電力を地産地消できる点をアピールして利用者の拡大を図る。電力とガスのセット割引や再生可能エネルギーの地産地消のメリットを訴求できれば、家庭向けの市場でも全国でシェアを伸ばせる余地は大きい。

第60回:「電力市場の自由化を推進する広域機関、情報システムのトラブルが相次ぐ」

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