地熱発電所を建設するためには、地表調査と掘削調査を実施して発電に必要な資源量を確認してから工事に着手する流れが一般的だ(図5)。発電能力が10MW(メガワット)以上の場合には環境影響評価も義務づけられている。地表調査から発電所の運転開始まで10年以上かかるケースが多い。一連の調査と環境影響評価が順調に進めば、2020年代の後半には新しい地熱発電所が壮瞥町で運転を開始する。
火山国の日本は地熱の資源量が世界で3番目に多く、北海道でも広範囲に地熱資源が分布している。特に地熱資源が集中しているのは南西部で、そのうちの1つが壮瞥町を含む洞爺湖(とうやこ)の周辺だ(図6)。温泉地として有名な登別(のぼりべつ)も壮瞥町に隣接している。
ところが現在のところ北海道内で稼働している地熱発電所は1カ所しかない。北海道電力が南部の森町で1982年に運転を開始した「森発電所」だけである(図7)。森発電所は活火山の駒ケ岳の近くに立地しているが、国立・国定公園に含まれていないために建設が可能になった。
1974年に政府が国立・国定公園内で地熱発電の開発を禁止したことで、火山地帯の多くが開発の対象から外れた。北海道には数多くの国立・国定公園があり、洞爺湖の周辺地域は「支笏(しこつ)洞爺国立公園」に指定されている(図8)。
壮瞥町も一部の地域が支笏洞爺国立公園に入るが、政府が2012年から地熱発電の規制を緩和して、条件を満たせば発電所を建設できるようになった。北海道の他の地域でも、地熱発電の開発プロジェクトが進み始めている。
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