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» 2016年05月13日 13時00分 UPDATE

次世代の火力発電ロードマップ(2):石炭火力で発電効率50%に、実用化が目前の「石炭ガス化複合発電」 (1/3)

火力発電に伴うCO2排出量を削減する有力な技術の1つが「石炭ガス化複合発電(IGCC)」である。発電効率の高いIGCCでは従来の石炭火力と比べてCO2が2割も少なくなる。広島県の火力発電所で実証試験設備の建設が進み、2020年には50万kW級の発電設備が福島県内で稼働する予定だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

第1回:「火力発電の最先端技術を2021年までに確立、CO2削減へ開発を加速」

 政府が推進する火力発電の技術開発の方向性は明確に決まっている。燃料はLNG(液化天然ガス)と石炭の2種類で、石油は対象外だ。将来はCO2(二酸化炭素)の排出量が少ない水素も燃料に加える。そして発電方法はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「複合発電(コンバインドサイクル)」が主流になる。

 石炭を使って複合発電を可能にする技術が「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」である。石炭を高温の炉の中で燃焼してガスを発生させてから、ガスタービンで発電する方式だ(図1)。その後にガスタービンの排熱を回収して蒸気タービンでも発電する。IGCCは2段階のプロセスで発電効率を高めることができる。

図1 「石炭ガス化複合発電」の仕組み(画像をクリックすると通常の石炭火力発電と比較)。出典:NEDO

 従来の石炭火力では発電効率(燃料の発熱量を発電量に変換できる割合)が36%程度で、最新鋭の発電設備でも40%程度が限界だ。これに対してIGCCは46〜50%の発電効率になる(図2)。さらにIGCCに燃料電池を組み合わせた「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」を実現できると、発電効率は55%程度まで向上して現在のLNG火力を上回る。

図2 次世代火力発電のロードマップにおける「石炭ガス化複合発電」の位置づけ(画像をクリックするとロードマップ全体を表示)。出典:資源エネルギー庁

 IGCC/IGFCの取り組みでは「大崎クールジェンプロジェクト」が進んでいる。広島県にある中国電力の「大崎発電所」の構内にIGCCの実証試験設備を建設中で、2017年3月に運転を開始する予定だ(図3)。発電能力は16万6000kW(キロワット)になる。

図3 「大崎クールジェンプロジェクト」の実証試験設備エリア(画像をクリックすると所在地と周辺地域も表示)。出典:大崎クールジェン

 このプロジェクトは3段階に分けて実証試験の範囲を拡大していく。第2段階ではIGCCの発電設備から生じるCO2を分離・回収して再利用できるようにする(図4)。回収したCO2はガスの燃焼効率を高めるのに使うほか、水素が豊富なガスを作り出して第3段階のIGFCの燃料にも利用する計画だ。

図4 「大崎クールジェンプロジェクト」の実証試験の全体像と実施スケジュール(それぞれ画像をクリックすると拡大)。出典:大崎クールジェン

 すでにCO2分離・回収設備の設計作業は2016年4月から始まっている。IGCCと連携した第2段階の実証試験を2019年度中に開始する予定だ。続いて第3段階のIGFCを加えた実証試験を2021年度に実施して、大崎クールジェンプロジェクトは完結する。

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