石炭火力で発電効率50%に、実用化が目前の「石炭ガス化複合発電」次世代の火力発電ロードマップ(2)(2/3 ページ)

» 2016年05月13日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

「酸素吹き」と「空気吹き」の2種類を開発

 次世代の石炭火力の主流になるIGCCではガス化の方法が2通りある。石炭を燃焼させる時に酸素を使う「酸素吹きIGCC」と、窒素を含む空気を利用する「空気吹きIGCC」だ。酸素を使うと石炭の燃焼温度を高くできるためにガスを発生させやすい。ただし酸素を製造する装置を動かす必要があり、発電所の中で大量の電力を消費してしまう。実際に発電所から送電できる電力は空気を使うほうが多くなる(図5)。

図5 「酸素吹きIGCC」と「空気吹きIGCC」の発電効率。発電端:発電設備の出力、送電端:発電所から送電線への出力。出典:NEDO

 大崎クールジェンプロジェクトのIGCCは酸素吹き方式で、発電所から送電する時点(送電端)の発電効率は40.5%にとどまる見通しだ。一方で空気吹き方式のIGCCが福島県の火力発電所で2013年から商用運転を続けている。東京電力と東北電力が共同で運営する「勿来(なこそ)発電所」の10号機である(図6)。

図6 「勿来発電所10号機」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:NEDO

 発電能力は25万kWで、送電端の発電効率は41%と高い。空気吹きIGCCのメリットを実証している。さらに同じ勿来発電所の構内に50万kW級の空気吹きIGCCを建設する計画が進行中だ。東京電力が推進する「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画」である。

 この計画では勿来発電所に50万kWのIGCCを建設するほか、福島県内にある東京電力の「広野火力発電所」にも54万kWのIGCCを建設する(図7)。現在は環境影響評価の手続きを進めている段階で、2016年内に工事を開始できる見通しだ。運転開始は2020〜2021年を予定している。今のところ発電効率は不明だが、次世代火力発電のロードマップが目指す46%に近づけることが課題になる。

図7 「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画」の完成イメージ(画像をクリックすると拡大)。「勿来発電所」(左)、「広野火力発電所」(右)。出典:東京電力、常磐共同火力

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