2020年代に導入できる火力発電技術、タービン1基で高効率に次世代の火力発電ロードマップ(3)(1/3 ページ)

次世代の火力発電は第1〜第3世代まで進化が続いていく。第1世代の技術は実証フェーズがまもなく終わり、2020年代に商用機の導入が活発に進む。石炭火力とLNG火力ともにタービン1基のシンプルな構成で、第2世代の複合発電方式に近い50%前後の発電効率を低コストで実現できる。

» 2016年05月16日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第2回:「石炭火力で発電効率50%に、実用化が目前の石炭ガス化複合発電」

 これから2020年代に向けて登場してくる次世代の火力発電のうち、実用化が最も早い第1世代の技術が2種類ある。1つは石炭火力の「先進超々臨界圧(A-USC:Advanced-Ultra Super Critical)」で、もう1つはLNG(液化天然ガス)を燃料に使う「高湿分空気利用ガスタービン(AHAT:Advanced Humid Air Turbine)」である(図1)。

図1 次世代の火力発電技術(画像をクリックすると開発計画の全体を表示)。出典:資源エネルギー庁

 どちらも複雑なネーミングだが、「Advanced(先進的な)」と付いていることからもわかるように、現時点で広く使われている発電方式を進化させたものだ。石炭火力では高温・高圧の蒸気でタービンを回転させる「超々臨界圧(USC)」が最新鋭の発電技術で、さらに蒸気の温度と圧力を引き上げた方式がA-USCである(図2)。

図2 第1世代の発電技術の特徴(画像をクリックすると発電効率などを表示)。出典:資源エネルギー庁

 一方のLNG火力ではガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「複合発電(コンバインドサイクル)」が現在の主流になっている。これに対して次世代のAHATはガスタービンだけを使いながら、発電後の排ガスから水分を回収してガスの燃焼効率を高めることができる。複合発電のように蒸気タービンを組み合わせて発電する代わりに、湿った空気でガスタービン単独の発電効率を向上させる技術だ。

 AHATの発電効率は50%を超えて、複合発電によるLNG火力と同等の水準になる。しかも蒸気タービンを使わないために導入コストを低く抑えることが可能だ。同様に石炭火力のA-USCはガスタービンを使わずに、現在のUSCと比べて発電効率を4〜6ポイントほど高めることができる。

 A-USCもAHATも設備の構成が従来の火力発電所と大きく変わらないことから、老朽化した既存の発電設備を更新しやすい点もメリットになる。特に古い火力発電所を数多く抱える電力会社にとっては、低コストで設備を更新できる魅力的な発電方式と言える。

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