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» 2016年05月19日 09時00分 UPDATE

エネルギー市場最前線:電気の埋蔵金「需給調整技術」、導入のカギは“レジ係”にあり (1/5)

京セラが取り組む「自動デマンドレスポンス」への取り組みが着実な成果を残している。ネガワット取引実現などの実証事業に参加。特に食品スーパーをベースとした試験で大きな成果を出している。しかし、その裏には地道な取り組みがあった。京セラ 東京事務所 研究開発本部 ソフトウェアラボ システム研究部責任者の草野吉雅氏に話を聞いた。

[三島一孝,スマートジャパン]

 京セラ 東京事務所 研究開発本部 ソフトウェアラボ システム研究部責任者の草野吉雅氏へのインタビューの前に、デマンドレスポンスの概要と京セラの取り組みについて振り返りたい。

 「同時同量の法則」ともいわれるように、電力は常に需要と供給のバランスを実現しなければならない。しかし、夏季など電力使用量が急激に上がるような場合や、再生可能エネルギーの急な発電変動が発生する場合など、需要と供給のバランスを維持するのが難しい場面が出てくる。こうした急な需給バランスの崩れに対応するために、電力会社などからの要請に応じて、需要家(利用者)が電力の使用量を抑制する「デマンドレスポンス(DR)」への注目が集まっている。

 通常のデマンドレスポンスは、電力会社からの要請に対して、アグリゲータ(需要家をまとめる仲介事業者)が仲介役となって需要家の節電を取りまとめる。一般的には需要家へのデマンドレスポンス要請はメールなどを利用し、需要家自身が機器を制御して節電に協力するといった「手動」の場合が多い。しかしこれをITなどを駆使して自動化する技術が「自動デマンドレスポンス(ADR)」である。

 この自動デマンドレスポンスの日本初の実証実験を行ったのが、京セラ、日本IBM、東急コミュニティーの3社だ。

 3社は2014年10月〜2015年2月にかけて、横浜市にあるオフィスビルと店舗、家庭の合計25カ所をつなぎ、デマンドレスポンスの要請から実行・実施報告までを自動化する日本初の実証試験を行った。ADRの国際標準規格「OpenADR2.0 Profile b(OpenADR2.0b)」を使用したことが特徴で、OpenADR2.0bに対応していない需要家へは、独自のプロトコルで接続を行った(関連記事)。

 この実証により、着実に成果を残したことから、2015年度は新エネルギー導入促進協議会が公募する「平成26年度次世代エネルギー技術実証事業費補助金」の「ネガワット取引に係るエネルギーマネジメントシステム構築と実証」の事業者に京セラが選定された。

節電電力を取引するネガワット取引実現への実証

 ネガワット取引とは、電力使用量の削減分を売買することである。デマンドレスポンスにより電力会社の要求を受けて削減した電力を、さらに取引する仕組みだ。電力を発電するには当然コストが発生するので、使用量がひっ迫時に要請に応じて節電する行為は、相応の電力を発電したのと同様の価値を持つ。そのため、それに報いる仕組みとして、報奨金を用意して支援しようという動きである。

 現実的にはデマンドレスポンスを問題なく実現しつつ、それらを透明化して取引するには、さまざまな仕組みやシステムの準備が必要になる。京セラでは、2014年度の実証結果を生かし、独自システムとして「POM SYSTEM(総合エネルギー管理システム)」を用意。デマンドレスポンスや電力の見える化機能などの他、分析機能やアラート機能、設備管理機能やレポート機能などを統合的に備えているシステムである。

 京セラでは、2015年度の実証では、POM SYSTEMを軸に、ファストデマンドレスポンスにおける自動化システムの有効性とネガワット取引の事業性を検証した。実証フィールドは、食品スーパーマーケット、ビル、工場の合計12カ所で、スーパーマーケットなどに導入された空調・蓄電池の自動制御システムによるファストデマンドレスポンスとしての価値の実証・改善などを実証した。

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