水力発電で1万1000世帯分の電力、流域を守る新しいダムで運転開始電力供給サービス(2/2 ページ)

» 2016年05月20日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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取水位置を変えて下流の水温上昇を防ぐ

 津軽ダムでは工事がほぼ完了して、2016年2月から貯水状態を確認する試験堪水(たんすい)に入った。ダムの貯水部から発電機までは、ダムの堤体(ていたい)の内側に設けた取水設備を使って水流を取り込む方式だ(図5)。

図5 上流側から見た「津軽ダム」の完成イメージ(上)、「目屋ダム」が水没する直前の状況(下、2016年2月)。「津軽ダム」の文字の左に見える垂直の構造物が取水設備。出典:国土交通省東北地方整備局

 堤体は高さが97メートルあり、平常時には最高で75メートルの位置まで水が貯まる。さらに20メートル上まで水を貯めることが可能で、洪水時の最高水位にも耐えられる設計になっている。この堤体の上部から取水することで、最大落差が65メートルの水流を水車発電機に送り込むことができる。

 最近のダムでは「選択取水設備」を採用する方式が多い。津軽ダムでは取水する位置を6段階で変えることが可能で、放流水の温度を季節によって調整する(図6)。特に夏から秋にかけてはダムの水面に近い部分の水温が上昇するため、そのまま放流すると下流に生息する魚などに影響を与えてしまう。

図6 「選択取水設備」の仕組み(上)、取水位置による放流水の温度の違い(下)。出典:国土交通省東北地方整備局

 以前に目屋ダムから放流していた時の水温と同程度になるように、取水位置を変えながら放流水の温度上昇を防ぐ仕組みだ。現在の計画では取水位置を最大で30メートルほど低くして水温を調整する。取水位置を下げた状態では供給できる電力も小さくなる。

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