太陽光発電で2万世帯分の電力、再生可能エネルギー100%を目指す南相馬市に:自然エネルギー(2/2 ページ)
南相馬市は東日本大震災で津波と原子力発電所の事故による甚大な被害を受けた。現在も市の東半分の地域では放射能の除染作業が続いている(図4)。メガソーラーを建設する市有地がある場所も除染作業中の「右田」「海老」「真野(鹿島)」の3地区にある。
図4 南相馬市の除染状況(2016年3月時点、画像をクリックすると注釈も表示)。出典:南相馬市
復興計画で重要な役割を果たすのが再生可能エネルギーで、2012年度から「南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン」に取り組んできた。2030年代には市内のエネルギー消費量の100%を再生可能エネルギーで供給できるように、2012年度に5%だった自給率を2020年度に65%まで引き上げる目標を掲げている(図5)。
図5 南相馬市の再生可能エネルギー導入目標。出典:南相馬市
再生可能エネルギーの中でも太陽光発電と風力発電の導入ポテンシャルが大きいことから、南相馬市では太陽光発電設備を公共施設に率先して導入するほか、民間企業の誘致を促進してきた(図6)。再利用がむずかしい被災地をメガソーラー向けに提供する施策もビジョンに沿ったものである。
図6 南相馬市の再生可能エネルギー導入ポテンシャル。GWh:ギガワット時(=100万キロワット時)。出典:南相馬市
南相馬市は2015年3月に全国の自治体で初めて「脱原発都市宣言」を出して、原子力に依存しない街づくりを進めている。省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの積極的利用、さらに災害に強いスマートコミュニティを市内に展開する方針だ(図7)。太陽光発電の電力を使って植物工場を増やす構想もあり、農作物の新しい生産方法の開発にも取り組んでいく。
図7 「南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン」の基本方針。出典:南相馬市
- 「脱原発都市」にメガソーラー、35億円で2700世帯分の電力を
福島第一原子力発電所から20キロメートル圏内にある南相馬市の農地で、発電能力が8MWを超えるメガソーラーの開発プロジェクトが進んでいる。現在も立ち入りが制限されている避難指示区域内の2カ所に建設する計画だ。35億円にのぼる総事業費を地元の金融機関も加わって支援する。
- 再生可能エネルギー導入量を5万kW拡大、南相馬市で大型蓄電システムが稼働
東北電力が「南相馬変電所」(福島県南相馬市)に設置を進めていた蓄電池システムが、営業運転を開始した。容量4万kWhの大規模な蓄電池システムで、出力が不安定な再生可能エネルギーの余剰電力の吸収などに活用する。今後検証を進める計画で、再生可能エネルギーの導入量拡大効果を約5万kW程度拡大できる見込みだ。
- 狭い水路でも低コストな発電を可能に、南相馬市で小水力実証を開始
ダイキンは上水道の水流エネルギーを利用して発電する、管水路用マイクロ水力発電システムの実用化に向け、2015年7月30日から福島県南相馬市の浄水場で実証運転を開始する。発電出力は最大71.4kW、年間発電量は619MWhを見込んでいる。
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