太陽光発電で被災地が生まれ変わる、洋上風力や地熱発電も復興を後押しエネルギー列島2016年版(7)福島(2/4 ページ)

» 2016年05月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

2040年度にエネルギー自給率100%へ

 福島第一原子力発電所が立地する大熊町でも、「大熊町ふるさと再興メガソーラー」が2015年12月に運転を開始している(図4)。建設地は太平洋沿岸から5キロメートルほど内陸に入った地区で、震災前は農地だった場所だ。福島県をはじめ地元の自治体や金融機関などが出資する福島発電が事業者になって建設した。

図4 「大熊町ふるさと再興メガソーラー」の全景と太陽光パネル。出典:福島発電

 田んぼや畑があった3.2万平方メートルの用地を利用したメガソーラーで、1.9MWの発電能力がある。発電した電力は固定価格買取制度を通じて売電するが、買取期間の20年間が終了した後は再び農地に戻す計画だ。その間には売電収入の一部を生かして、近くに建設する予定の植物工場の運営を支援することになっている。

 福島県内では津波の被害で農作物の栽培が困難になった農地は多い。太平洋沿岸の相馬市では、津波による塩害の影響を受けた70万平方メートルの農地をメガソーラーに転用した。九電工を中心とする共同企業体が事業者になって「レナトス相馬ソーラーパーク」を建設中だ。農地の形状に合わせて約20万枚の太陽光パネルを設置する(図5)。

図5 「レナトス相馬ソーラーパーク」の完成イメージ。出典:九電工ほか

 発電能力は52MWに達して、福島県内で最大のメガソーラーになる。運転開始は2017年6月を予定している。年間の発電量は6000万kWhを見込んでいて、1万7000世帯分の使用量に匹敵する規模だ。相馬市の総世帯数(1万4000世帯)を上回る。

 もっと大きなメガソーラーの建設計画も隣の南相馬市で始まった。110万平方メートルに及ぶ市有地を利用するプロジェクトで、住友商事が2018年3月に運転を開始する計画だ。発電能力は60MWになり、2万世帯分を超える電力を供給できる。2030年代にエネルギーの自給率100%を目指す南相馬市の総世帯数(2万3500世帯)の85%に相当する。

 福島県では全国よりも早く再生可能エネルギーの拡大を目指して、2013年度に「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン」を開始した。最終的な目標は2040年度に県内のエネルギー需要の100%を再生可能エネルギーで供給することである。

 この長期目標の達成に向けて、2011年度に22%だった自給率を2015年度までの3年間で24%に引き上げる計画だったが、実際には目標を上回って26.6%まで上昇した。続く2018年度までの3年間では自給率30%を目指して、太陽光発電を中心に導入量を拡大させていく方針だ(図6)。

図6 「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン」の導入目標。出典:福島県企画調整部

 すでに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では、福島県の太陽光発電は全国でトップに立った(図7)。認定済みの太陽光発電のうち1割が運転を開始するだけで2018年度の目標をクリアできる。そのほかの風力・中小水力・地熱・バイオマス発電でも導入量が着実に増えてきた。

図7 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

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