個々の細胞観測を可能にした上で、次に研究グループが取り組んだのが、油脂を多く持つユーグレナの選抜である。細胞内の脂質を染める手法を活用し、蛍光強度の違いを利用して、作り出した多様な細胞集団の中から特に油脂を多く含むユーグレナを選抜できるか検証した。その結果、野生株より約40%油脂を多く含むユーグレナ変異体を取得することに成功したという(図3)。
今回研究ではユーグレナを選抜するセルソーターは既存のものを利用している。しかし将来的にはそのプロセスをImPACTプログラムで開発中のセレンディピターを用いて行うことを想定しているという。これは1兆個以上の細胞集団から、特定の細胞を迅速かつ低コストに発見し解析できる装置で、現在開発が進められている。研究グループでは、このセレンディピターを活用することで、より多くの質の高い情報をユーグレナから取得して選抜に用いることで、さらに油脂を大量に含んだユーグレナをより高速かつ的確に選抜できる可能性があるという。
また、可視化方法を工夫することで、油脂含有量以外にもビタミン含有量の多いユーグレナなどの産業的に有用な特徴を持つユーグレナを選抜することが可能になり、ユーグレナ以外の微細藻類にもセレンディピターの応用を検討することで、機能性成分やバイオ燃料の研究の加速が期待できるとしている。
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