高速走行「電気バス」、無線充電の効率86%電気自動車(2/3 ページ)

» 2016年06月02日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

高効率なワイヤレス充電システム

 東芝はワイヤレス充電システムの開発・検証を早稲田大学理工学術院で教授を務める紙屋雄史氏の研究室と共同で進めた。2016年2月には東芝と紙屋研究室が開発した今回よりも一回り小さなEVバス「WEB-3 Advanced」(車体重量5990kg)の公道実証試験を開始したことを発表している(関連記事*3)

 開発したワイヤレス充電システムの特徴は、位置ずれを許容し、送電効率が高いことだ。送電パッドと受電パッドの垂直距離は利用時に10〜11センチメートル(cm)とした。実用上、垂直距離の変動は少ない。問題は水平距離だ。前後10cm、左右20cmのずれを許容することができた。送受電に電磁誘導方式ではなく、磁界共鳴方式を採用したためだという*4)

 「送電のシステム効率は86%である。技術の詳細は公表していないものの、送電パッドを2つ斜めに配置したパッド構成に工夫がある(図3)」(東芝)。

 送電電力は44kW。送電周波数として85キロヘルツ(kHz)帯を用いた。電力伝送システムが周囲に放射する不要な電磁波の強さを定める放射エミッション基準を満たしているため、周囲の設備に影響を与えないという。

*3) 「当社はプロジェクト統括と今回の中型EVバス製作に当たった。早稲田大学は小型EVバスを主導した。両者が共同でワイヤレス充電技術を開発し、検証を進めた」(東芝)。
*4) 電磁誘導方式は古くから原理が知られており、さまざまな機器において実用化が進んでいる。送電・受電パッドを近づけた後、送電側のコイルに電流を流すことで、受電側のコイルの中にも電流が発生する。磁界共鳴方式は2006年に米MITが発表したもの。送電・受電パッドの共振周波数を同じにすることで共鳴現象を発生させ、伝送距離や位置ずれ許容範囲を向上させた(関連記事)。

図3 道路に埋め込まれたワイヤレス充電装置 有線を利用する充電器(青色)も利用できる(クリックで拡大)。出典:東芝

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