シビレエイで発電する、驚きの発電システムを理研が開発自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2016年06月03日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

電気器官のみでもシビレエイは発電可能

 共同研究グループでは最初に、シビレエイ生体の頭部を継続的に圧迫する物理的刺激による電気応答を確認した。捕獲後数日以内の新鮮なシビレエイを用い、電気器官周辺部に導電布を貼り、頭部を手で継続的に圧迫刺激して電気的応答を測定した。

 その結果、10ミリ秒以下という短時間ながらパルス電流が測定され、ピーク電圧は19ボルト(V)、ピーク電流は8アンペア(A)となった。また、このパルス電流を利用してLEDの点灯やコンデンサーへの蓄電が確認できた。さらに蓄電エネルギーでLEDを長時間点灯させることやミニカーを駆動させることができたという。これらのことから、シビレエイの電気で電気器具が機能することを証明した。

 次に、シビレエイ個体から取り出した電気器官への化学的刺激による発電性能の測定実験を行った。取り出した電気器官は、人工脳髄液(ACSF)中で一時保存した後、導電布で挟み込み、上下それぞれに電極をつないだ。

 正極側からシリンジ針を7本刺し、1シリンジあたり0.25ミリリットル(ml)のアセチルコリン溶液を注入し、電気的応答を測定した。このとき、アセチルコリン溶液の溶媒はACSFを使用し、アセチルコリンの濃度は1ミリモル(mM)だった。その結果、ピーク電圧は91ミリボルト(mV)、ピーク電流は0.25ミリアンペア(mA)と低いものの、生体の場合より長い1分間以上もの間、電流が継続して流れた。さらに、針の本数を20本に増やすことで、ピーク電圧1.5V、ピーク電流0.64mAを達成したという。

 アセチルコリンを含まないACSFの注入では電流が発生しないことから、この現象はアセチルコリンの組織内拡散により起こると考えられた。電気器官をACSFで洗浄することで、再び同様の反応が得られた他、さらにACSFに浸しておくことで、1日以上経過した後でも電流の発生が確認できたという。

 これらのことから、電気器官が摘出後もその機能を保ち、繰り返し使用可能であることが明らかとなった。これにより、化学刺激コントロール型発電システムの基礎原理が実証されたといえる。

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