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» 2016年06月06日 13時00分 UPDATE

蓄電・発電機器:二酸化炭素を出さない石炭火力、実現は間に合うか (1/2)

石炭火力は低コストで安定的に運用できるため、大量に導入されている。より発電効率を高めつつ、これ以上の排出が許されない二酸化炭素を削減するための10年計画が進行中だ。残る5年で一気に実証試験を進めていく。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 石炭は化石燃料の中でも、比較的安価に安定して入手できる。そのため、日本の年間発電量の31%(2014年度)を担う重要なエネルギー源に成長した(図1)*1)。日本の輸入量は巨大であり、2014年時点で年間1.9億トン(世界第3位)。

*1) 電気事業連合会の公開資料によれば、比率が高い順に、天然ガス(46.2%)、石炭(31.0%)、石油など(10.6%)、水力(9.0%)、地熱・新エネ(3.2%)。

図1 日本の電力源構成 出典:電気事業連合会が2015年5月に発表した2014年度の電源別発電電力量構成比を基に本誌が作図

 石炭火力発電では、石炭を塊状のままでは利用しない。直径40マイクロメートル(μm)程度に粉砕後、ボイラーで燃焼、蒸気タービンで発電する。現在の主力である微粉炭火力発電システムだ。数十年前から現在までタービン内の蒸気圧力や温度を高めることで発電効率の向上を図ってきた。2010年時点で効率は43%程度に到達。2008年から9カ年計画で48%まで高めようとしている。

二酸化炭素排出量をゼロへ

 石炭火力には大きな欠点がある。二酸化炭素排出量だ。全ての発電方式の中で最も排出量が多い。二酸化炭素削減は待ったなしの状況にある。国内でも大気中の二酸化炭素濃度の測定値が400ピーピーエム(ppm、0.4%)を超えてしまった。平均気温の上昇を2℃以内に保つためには、二酸化炭素排出量を2050年には実質ゼロにする技術開発が必要だ*2)

 石炭火力を改善する方向性は2つある。まずは、発電効率を高めることで、電力量1キロワット時(kWh)を得る際に発生する二酸化炭素の量を減らす。加えて発生した二酸化炭素を分離・回収する。その際、発電量1kWh当たりのコストが高くならないように抑える。

 このような技術開発は可能なのだろうか。

*2) 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によれば状況は厳しい。世界の農業生産などに与える影響を経済的に耐えられる程度に抑えるには、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑制する必要がある。そのためには、19世紀後半以降の二酸化炭素排出量を2兆9000億トン(累積値)にとどめなければならない。2011年までに1兆8900億トンを排出しているため、残りは1兆100億トンだ。今後20年間で排出可能量を全て使い果たす計画だったとしても年間400億トンの以下に抑える計算になる。ところが、現在の各国政府の計画値を合計すると、2030年時点でも二酸化炭素排出量は年間550億トンに上る見込みだ。

二酸化炭素を分離後、三段階で発電

 現在、最も有望だと考えられている石炭火力の最終形はこうだ*3)。まず石炭に酸素を少量吹き付けて、水素と一酸化炭素を主に含む石炭ガス化ガスを製造する。これを燃料電池に通じて発電(第1段)。

 可燃性ガスを含む燃料電池の排気に石炭ガス化ガスを加え、空気と混合してガスタービンで発電(第2段)。

 ガスタービンの高温の排気から排熱を回収し、蒸気タービンで発電(第3段)。3段階にわたって発電することにより、既存の方式と比較して10ポイント程度効率を高めることができるという。

 これを二酸化炭素削減策と組み合わせる。第1段で燃料電池にガスを通じる前に、二酸化炭素分離回収装置に通じる。あらかじめ二酸化炭素を除去できるため、排出量が減る。

*3) この他、既存の火力発電所の最後段に二酸化炭素分離回収装置を接続する技術開発も進んでいる(関連記事)。

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