執務を止めずにゼロエネ改修、「使えるZEB」を自社実践省エネ機器

建築物の省エネに向けた規制の強化や取り組みが加速しており、今後ビルの省エネ改修需要は増加していく見込みだ。竹中工務店はこうした背景から技術検証やノウハウの蓄積を目的に、自社のオフィスビルで「ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」化を目指した改修を実施した。オフィスでの執務は継続したまま改修を行ったという。

» 2016年06月07日 15時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 竹中工務店は2016月5月、同社のオフィスビルにおいて執務を続けながら「ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」化を目指した改修を行ったと発表した。2003年に完成したオフィスビルを改修したもので、住宅などより床面積当たりの消費電力が大きいとされる実用オフィスで「実験的なZEBから本当に使えるZEBを目指した」(同社)としている。

 改修を行ったのは現在、同社の東関東支店として使用している千葉市中央区のオフィスビル。地上2階建てのRC/S造で、敷地面積は1432平方メートル、延床面積は1318平方メートルだ。改修は2015年10月〜2016年3月の期間に実施した。

 改修は「快適性の考え方を変える」「スーパー省エネビルを作る」「スマートな働き方を考える」「災害にも強くなる」という4つのコンセプトのもとに実施した。省エネ性能に関しては、超高性能断熱、ダブルスキン、ブラインドおよび自然通風の自動制御、調光LED、デシカント空調などを採用した他、地中熱利用、放射空調、太陽光発電設備なども導入。これらを統合制御することで、プラスエネルギービルを実現した(図1)。

図1 ZEB化に向けて導入した技術(クリックで拡大)出典:竹中工務店

 こうした省エネ改修などを施すことで、少ないエネルギーで建物を稼働できるようになり、災害時にライフラインが断絶した場合でも太陽光発電設備や蓄電池の活用によって長期間オフィス機能を維持できるようにしている。

 この他に「使えるZEB」として、光の変化や風などの環境変化も考慮し、温度や湿度以外の面でもオフィス利用者の快適性を高める工夫を施した。利用者のワークスタイルを見直し、効率化を図ることで使用電力量の削減も図っている。

 政府は2030年に新築建築物の平均でZEB化を達成するという目標を掲げており、さらに2016年4月1日からは「建築物省エネ法」が施行されるなど、ビルの省エネに向けた動きが加速している(関連記事)。竹中工務店では今回の改修プロジェクトで導入した開発技術の効果や運用で得られた知見を、今後需要の増加が見込まれるビルの省エネ改修に活用していく方針だ。

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