ブロッコリーを栽培しながら太陽光発電、新潟・佐渡島で営農型の実証開始スマートアグリ(2/2 ページ)

» 2016年06月16日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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石油火力に依存する離島に太陽光発電

 東京大学とソーラーフロンティアは同じ佐渡島にある旧・小学校の校舎を利用した太陽光発電プロジェクトにも2014年から取り組んでいる。地元の酒造メーカーが佐渡市から校舎を借り受けて、再生可能エネルギーによる電力を活用して酒を製造する「学校蔵プロジェクト」である(図3)。

図3 佐渡市の「学校蔵プロジェクト」で旧・水泳プールに設置した薄膜太陽電池パネル(上、画像をクリックすると拡大)、「学校蔵」と製造した酒(下)。出典:ソーラーフロンティア

 閉鎖後の校舎を酒蔵に利用する一方、敷地内にある旧・水泳プールに太陽電池パネルを設置して電力の自給自足を可能にした。発電能力は営農型のプロジェクトと同様に10kWで、酒の製造に必要な電力の20%をまかなうことができる。2015年11月から「学校蔵」のブランド名で酒の販売も開始した。

図4 佐渡島の年平均日射量(茶色が濃いほど日照量は多い)。出典:佐渡市役所

 離島の佐渡島では主力の電源が東北電力の運転する石油火力発電所である。重油を燃料に利用したディーゼル発電設備が島内の2カ所で稼働している。石油火力発電は燃料の輸入価格が石炭や天然ガスよりも高く、CO2(二酸化炭素)の排出量も天然ガスによる火力発電と比べて多い。

 自然環境に恵まれた島の未来に向けて、発電コストとCO2排出量の両方を抑制できる再生可能エネルギーの拡大が急務だ。日本海に浮かぶ佐渡島は風況が良好なほか、南部では日射量も比較的多い(図4)。営農型の太陽光発電を実施する北端の鷲崎地区でも、年間を通じて日射量を十分に確保できる。

 島のほぼ真ん中に位置する佐渡市の中心部では、年間の平均日射量が東京の都心部を上回っている。日射量が全国でトップクラスの宮崎市と比べても90%程度の日射量を期待できる(図5)。

図5 東京(都心部)や宮崎市と比べた日射量。単位:kWh/m2・日(1平方メートルあたりの1日のエネルギー賦存量、電力換算=キロワット時)。出典:佐渡市役所

 営農型のプロジェクトで採用した薄膜の太陽電池パネルは銅・インジウム・セレンを組み合わせた化合物による半導体で構成した製品で、太陽光が当たってパネルの温度が上昇しても発電量が落ちにくい特性がある。実際の発電量と農作物の収穫量がどの程度になるか、農業関係者の注目が集まる。

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