風力+太陽光が2040年に石炭火力を超える、世界の電力市場の将来予測:自然エネルギー(2/2 ページ)
新たな電力源に対する投資の動向を見ても、風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーが全体の7割を占める。2016〜2040年の累計で再生可能エネルギーの投資額は7.8兆米ドル(約820兆円)にのぼり、火力と原子力を合わせた投資額の2倍以上になる(図4)。これが第3の予測である。
図4 電源開発の投資額(2016〜2040年の累計)。再生可能エネルギー(左)、火力+原子力(右)。単位:1兆米ドル。出典:bnef.com
再生可能エネルギーの投資額のうち、風力は陸上と洋上を合わせて3.1兆米ドル、太陽光は3.4兆米ドル、水力は0.9兆米ドルを見込める。これに対して石炭火力は1.2兆米ドル、天然ガス火力は0.9兆米ドルで、原子力も1.1兆米ドルにとどまる。
ただし再生可能エネルギーによる電力が大幅に増えるものの、全世界の地球温暖化対策で目指す「気温上昇2℃以下」の達成はむずかしい状況だ。第4の予測では、発電に伴って排出するCO2(二酸化炭素)が2040年には現在よりも5%増えてしまう(図5)。
図5 電力による年間CO2排出量。赤がNEO 2016 の予測、緑が2℃以下の目標。単位:10億トン。出典:bnef.com
欧米や中国を中心にCO2排出量の削減が進む一方、インドと東南アジアで排出量が大幅に増加するためだ。2040年に2℃以下の目標を達成するためには、CO2を排出しない電力源の開発に全世界で5.3兆米ドルの追加投資が必要になると予測している。
このほかに第5の予測として電気自動車が急速に普及していく。2040年に全世界で販売する乗用車の35%が電気自動車になり、消費する電力量は年間に2.7兆kWhに達する見通しだ(図6)。加えて電気自動車の普及によって蓄電池のコストが76%低下する効果も期待できる。再生可能エネルギーの導入量を拡大するうえで蓄電池の役割は大きく、コストの低下で蓄電容量の拡大に弾みがつく。
図6 全世界の電気自動車が必要とする電力量。単位:10億キロワット時。出典:bnef.com
- 再生可能エネルギーの発電設備が世界で8%増加、過去最高の伸び率
2015年に全世界で1.5億キロワットにのぼる再生可能エネルギーの発電設備が運転を開始した。前年から8.3%増えて過去最高の伸び率だ。種類別では風力・太陽光・水力の順に多く、全体の4割以上を風力が占めた。日本は過去6年間に13万件の特許を取得して世界1位の技術力を見せる。
- 再生可能エネルギーで世界のGDPを0.6%押し上げ、日本は+2.3%でトップ
全世界を対象に再生可能エネルギーの導入を推進する国際機関が経済効果を初めて試算した。世界のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの比率を2倍に拡大させると、GDPが0.6%上昇する結果になった。2030年には再生可能エネルギー分野の雇用者数が2000万人を突破する。
- 再生可能エネルギーの投資額が過去最高に、2015年に全世界で35兆円
先進国と発展途上国の双方で再生可能エネルギーの投資が拡大している。国連の環境問題を担当する機関が各国の投資状況をまとめたところ、2015年の投資額は全世界で35兆円に達して、過去最高だった2011年を上回った。日本は中国と米国に次いで3番目に多く、投資額は4兆円にのぼった。
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