新規事業でエネルギー市場に参入、リコーがIoTで狙う省エネの先省エネ機器(2/2 ページ)

» 2016年06月17日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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“つながる”LED照明で新しい付加価値を提供

図3 開発中のLED照明。センサーを搭載している(クリックで拡大)

 ブースでは現在リコーが開発中の新サービス「リコースマートファシリティ」を参考出展した。これはリコーのセンシング/制御技術を活用することで、オフィスなどの照明・空調コストを大幅に削減することを目指したサービスだ。

 サービスのキモとなるのは同社が開発を進めている新型LED照明である。これはLED照明本体に複数のセンサーを搭載し、室内の照度、人の有無、湿度・温度などを計測できる機能を加えたものだ。920MHz(メガヘルツ)帯を利用する無線モジュールも搭載しており、オフィスの照明として取り付けることで室内の明るさや温度・湿度を自動で計測できるようにする。そしてこの情報をもと照明や空調の運転をエリアごとに最適に制御することで、オフィス内のムダな消費電力を徹底的に削減するというサービスだ。

 実証としてリコーの広さ500平方メートル、100人ほどの従業員が働くオフィスに導入したところ、照明電力を約80%、空調電力を約40%削減でき、1日当たりの合計消費電力量を従来の292kWh(キロワット時)から58%減の122.5kWhまで削減できたという(図4)。

図4 実証導入の結果、1日の消費電力量を58%削減できたという(クリックで拡大)

 リコーがこのサービスでターゲットとしているのが既設のオフィスだ。「こうした空調や照明の制御システムは、新築のビルやオフィスには導入されることも多い。しかし日本にはバブル期に建設された古い建物が非常に多くある。そして今後はこうした既にある建物やオフィスの省エネニーズが高まっていくと見ている。そもそも全体の割合を見ると、LED照明を導入しているビルやオフィスもまだまだ少ない。既設のオフィスを対象とするため、業務への負荷が少なくなるように新たな配線工事を不要にするなど、設置工事も最小化できるように開発を進めている」(リコー)。

狙うのはデータ活用による新サービス

 「リコースマートファシリティ」の展開によるリコーの本当の狙いは、省エネだけではないという。ブース担当者は「最終的な目標としているのは単なる省エネの提供ではない。このサービスの導入によって得られるデータを活用した、新しいサービスの提供だ」と述べる。

 センサー類を搭載したLED照明を取り付けオフィスのデータを収集・集積していくと、従業員による“オフィスの使い方”が見えてくる。こうしたデータから「このエリアはあまり使われていない」「動線がよくないのではないか」といった分析を行っていくことで、オフィス環境の改善提案などが行えるのではないかという狙いである。

 「IoTの活用が話題となっているが、まさにそういった思想で開発を進めているサービス。導入した顧客対して単にモノを販売していくだけでなく、さらに一歩踏み込み、収集したデータを活用した新しいサービスの提供も視野にいれている」(リコー)。サービスの提供開始時期については「2016年中の提供はないが、なるべく早く提案を開始したいと考えている」(同社)としている。

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