もっと増やせる太陽光発電、コスト低減と長期安定稼働で課題解決再生可能エネルギーの拡大策(1)(2/3 ページ)

» 2016年06月20日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

ガイドラインを国と民間で整備

 太陽光発電のコストを低減するための技術開発はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に推進中だ。2030年までに火力発電と同等の1kWh(キロワット時)あたり7円を目指して、発電効率の高い太陽電池の研究開発に取り組んでいる(図4)。当面の目標は2014年の時点で21円/kWhだった発電コストを2020年に14円/kWhまで引き下げることである。

図4 太陽光発電のコストを7円/kWh以下に引き下げるシナリオ。W:ワット、Si:シリコン、CIS:銅・インジウム・セレン。出典:NEDO

 と同時に発電設備の工事費の低減にも取り組まなくてはならない。太陽光発電システムの導入費用を設備費・工事費・開発費に分けると、日本では工事費の割合が圧倒的に高いからだ(図5)。他の国と比べて2倍から5倍を上回る工事費がかかっている。

図5 太陽光発電設備の導入に必要な費用の内訳。$/kW:米ドル/キロワット、BOP:Balance Of Plant(周辺機器)。出典:資源エネルギー庁(Bloomberg New Energy Financeの資料をもとに作成)

 この問題の解決策として、政府はコスト競争力のある施工会社を育成する一方、太陽光パネルと屋根を一体化できる製品の開発を促進していく。合わせて規模の大きい事業用の太陽光発電設備の中から優良な施工事例をデータベースに集約して、日本に適した工事の手法を幅広く活用できるナレッジマネジメントの仕組みを構築する方針だ。

 さらに導入後の保守・点検を事業者が確実に実施して長期的に安定した発電を継続できる体制も構築していく。2017年度に改正するFITの新認定基準では、発電設備の点検・保守や更新・廃棄を含めた事業計画の提出を義務づける。

 政府は安定稼働に求められる要件をすべての事業者が着実に実行できるように、事業計画を策定するためのガイドラインを取りまとめる予定だ。加えて点検・保守の実施方法を記載したガイドラインを民間主体で整備していく(図6)。発電事業の経験が少ない事業者でも、ガイドラインに従って設備を適切に運用できるようになる。

図6 太陽光発電設備の保守・点検ガイドライン(画像をクリックすると固定価格買取制度の新認定基準も表示)。出典:資源エネルギー庁

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.