特にバイオマス発電の取り組みが活発に進んでいるのは、下水を処理する浄化センターである。栃木県が運営する4カ所の浄化センターでは、2015年2月から5月にかけてバイオガスを利用する発電設備が相次いで運転を開始している(図10)。
従来は下水の処理過程で発生する大量のバイオガス(消化ガス)を焼却処分してきたが、新たに発電用の燃料として用途が生まれた。4カ所を合わせて7台の燃料電池と8台のガスエンジン発電機を導入して、合計で935kWの電力を再生可能エネルギーで供給できる(図11)。年間の発電量は1900世帯分に相当する680万kWhになる。
県営だけではなく市営の浄化センターにもバイオガス発電の取り組みが広がっている。県内で最大の下水処理量を誇る宇都宮市の「川田水再生センター」では、年間に330万立方メートルも発生するバイオガスを使って発電事業を実施中だ。発電能力が105kWの燃料電池8台を導入して2016年4月に運転を開始した(図12)。
年間の発電量は717万kWを見込んでいて、2000世帯分の電力使用量に匹敵する。この発電事業は宇都宮市が民間企業に委託する方式で、市は初期投資なしにバイオガスと土地の使用料を得ることができる。一方で民間の発電事業者は固定価格買取制度で電力を売却して、建設費と運転維持費を回収するスキームである。
宇都宮市の西側に隣接する鹿沼市でも、同様のスキームによるバイオガス発電事業に取り組んでいる。下水や食品廃棄物を処理する「黒川終末処理場」に発電能力250kWのガスエンジン機を設置して、2015年7月に運転を開始した(図13)。
当初は下水の汚泥だけを利用して年間に90万kWhの発電量を見込んでいる。2016年度以降に食品廃棄物も加えてバイオガスの発生量を増やし、160万kWhまで電力の供給量を拡大させる計画だ(図14)。そのために食品廃棄物からバイオマス液を作り出す装置も導入する。下水と食品廃棄物を混合処理するバイオガス発電は全国でも珍しく、先進的な事例になる。
2015年版(9)栃木:「森林に優しいメガソーラーを、市街地ではバイオガス発電」
2014年版(9)栃木:「大きなダムから小さな川まで、水力発電の適地は逃さない」
2013年版(9)栃木:「日本の真ん中で急増するメガソーラー、木質から汚泥までバイオマスも多彩」
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