風力発電の導入を法改正で加速、洋上風力も開発しやすく : 再生可能エネルギーの拡大策(2) (3/3 ページ)
国内の風力発電は法制度の問題だけではなくて、技術面でも課題がある。太陽光発電と同様に、世界の主要国と比べて発電設備の導入コストが高いままだ。欧米の各国をはじめ中国やインドと比較しても風力発電のコストは2倍になっている(図7)。とりわけ設備の導入にかかる資本費が他国よりも明らかに高い。
図7 主要国の風力発電コストと買取価格。$/kW:米ドル/キロワット、$/MWh:米ドル/メガワット時、€/kWh:ユーロ/キロワット時、RPS:Renewable Portfolio Standard(再生可能エネルギー利用割合基準)。出典:資源エネルギー庁(Bloomberg New Energy Financeの資料をもとに作成)
風力発電の導入費用を設備費・工事費・開発費に分けると、日本では設備費の割合が圧倒的に大きい(図8)。風力発電の導入量が少ないために機器の価格が低下していないことが主な要因だ。国土が狭くて大規模な発電設備を導入しにくい点もコストの増加をもたらしている。
図8 風力発電設備の導入に必要な費用の内訳。$/kW:米ドル/キロワット、BOP:Balance Of Plant(周辺機器)。出典:資源エネルギー庁(Bloomberg New Energy Financeの資料をもとに作成)
政府はNEDOを中心に風力発電の性能を向上させる技術開発に取り組む一方、運転を開始した後のメンテナンス技術を高度化して発電効率を改善していく。風車の振動を感知するセンサーを使って遠隔監視を可能にしながら、設備のメンテナンス時期や部品の交換時期を予測する技術を開発する計画だ。2015年度から取り組んでいる「スマートメンテナンス」の実用化を急ぐ(図9)。
図9 風力発電設備を対象にした「スマートメンテナンス」の実施イメージ。CMS:状態監視システム、SCADA:監視制御システム、LAN・WAN:ローカルエリアネットワーク・ワイドエリアネットワーク、DB:データベース。出典:資源エネルギー庁
と同時に風力発電のメンテナンス作業に習熟した人材の育成を進める。育成プログラムを整備するのと合わせて、日本風力発電協会がメンテナンス能力を評価する資格認証制度の創設を検討中だ。風力発電では部品の不具合や老朽化による風車の破損事故が頻発している。発電効率の改善に加えて安全性を向上させるためにも、メンテナンス技術の普及促進は欠かせない。
第3回:「中小水力発電はコストダウンで普及、低い落差でも電力を作り出す」
洋上風力発電が近海に広がる、着床式で全国15カ所へ
風況に恵まれた北海道と東北の近海を中心に、大規模な洋上風力発電所の建設プロジェクトが続々と始まった。陸上よりも風が強く、風車の設置面積を広くとれるため、規模の大きい風力発電所を展開しやすい。水深の浅い場所に建設できる着床式の発電設備が全国各地の沖合に広がっていく。
風力発電は全世界で太陽光発電の2倍、途上国にも急速に広がる
日本では伸び悩んでいる風力発電だが、世界では太陽光発電よりも増えている。2014年には5000万kWを超える設備が運転を開始した。約半分は中国で、累計の容量でも圧倒的にトップだ。2位の米国と3位のドイツも導入量を伸ばす一方、アジアを中心に途上国の風力発電が活発になってきた。
急がれる太陽光発電と風力発電の安全対策、定期検査制度の導入も
2013年から2015年にかけて、全国各地で太陽光発電と風力発電の事故が相次いだ。政府は安全対策を徹底するため、発電設備に対する定期検査制度の導入や保安規制の強化に乗り出す。特に事故が頻発している風力発電に対しては2017年度から定期検査制度を適用する方針だ。
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