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» 2016年07月04日 15時00分 UPDATE

IT活用:悩ましいデータセンターの空調コスト、予測技術でムダを省いて20%省エネに

IoTの進展でデータセンターの使用電力量は今後さらに増えていく見込みだ。地球温暖化対策をとしても、コスト削減の観点においてもデータセンターの省エネ化は重要な課題になる。富士通研究所は、データセンターの電力消費量の多くを占める空調設備の省エネ運用を可能にする予測技術を開発した。

[長町基,スマートジャパン]

 富士通研究所は、データセンターの空調設備の省エネ運用に貢献する温度や湿度などの高精度な予測技術を開発した。データセンター特有の課題であった情報機器の出し入れやラック配置の変更など動的な状態変化に柔軟に対応しするため、得られたデータから空調効果を予測するモデルを逐次構築する高精度な予測技術を開発し、空調の省電力化を可能にしたという。

 現在、データセンター市場が成長するとともに消費電力量も増加傾向にある。今やデータセンターの電力消費量は、全電力量の1〜2%程度を占めるともいわれている。さらに、さまざまなモノがインターネットと繋がるIoT(Internet of Things)の発展により、データセンターが使用する電力量は今後も増加が見込まれている。地球温暖化防止のためには、データセンターの省エネ化も重要なポイントの1つといえる。

 省電力化のためには、データセンターの全電力量の30〜50%を占める空調設備の電力削減が効果的であり重要だ。従来のデータセンターの空調設備は、設置されているサーバなどICT機器の稼働率が増加しても管理温度や湿度が維持されるよう、データセンター内に設置された各種センサー情報に基づいて運用されており、一定の設定値を超えると安全のため急速に冷却をするなど過剰な空調運用が行われていた。これに対し富士通研究所は、溶鉱炉や自動車、ロボットなどで活用されている、将来の値を予測する「モデルベース制御」という手法に着目。これを活用してデータセンサー内の温度や湿度を予測し、それにもとづいて空調設備を最適に運転することで過剰運転の低減による空調電力の削減を目指した。(図1)。

図1 モデルベース空調制御システムのイメージ 出典:富士通研究所

 だが実際のデータセンターでは内部の情報機器、レイアウト、空調設備など設置機器が頻繁に変更される。これにより構築したモデルが実際の数値と乖離(かいり)して予測精度が低下するため、データセンターに適用することが難しかった。

 そこで同社はデータセンターにモデルベース制御を導入するため、状態に応じてモデルを構築できるJIT(Just In Time)モデリングを適用した。従来のJITモデリングでは、温度や湿度などの測定データから数学的な処理で有用な情報を選択し、予測モデルを作成して予測値を算出する。しかしこれらの測定データからだけでは、データセンターの動的な状態変化に即座に反映するための有用な情報が十分に選択されず、高精度な予測が困難だった。

 この課題をクリアするため、今回新たに機械の稼働率や風量など空調機設備の状態を新たに組み込んだデータベースを作成し、予測対象に対し有用な情報を計測データからだけでなく、空調機設備状態からも最低1つ以上自動で選択するという条件を設定。選択した変数を使って予測精度の高い予測モデルを作成することにより、予測精度の向上に成功した。これにより、データセンターの頻繁な状態変化に対応可能な、逐次モデルを構築する高精度な先読み予測技術が実現した(図2)。

図2 適用したJITモデリングの概要 出典:富士通研究所

 今回開発した技術については、100ラック規模の実データを利用したシミュレーションを行い、頻繁な状態変化においてもサーバ給気の予測温度を最大±2.1度、平均±0.17度の高い精度で予測できることを確認した。この予測値を活用して空調制御を行っていくと、サーバ電力量が7000万kWh(キロワット時)、空調電力量が2200万kWhである1000ラック規模のデータセンターの条件で試算した場合、消費電力の約20%にあたる450万kWhを削減できる見込みだという。

 富士通研究所では2016年度にこの技術を富士通の運営するデータセンターに導入。2017年度にその実稼働と、富士通の運用管理向けインフラストラクチャーソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Infrastructure Manager」への実装を予定している。

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