電力の「ネガワット取引」で国の方針が決まる、取引単位や調整金の計算方法など動き出す電力システム改革(64)(1/2 ページ)

企業や家庭の節電で生まれる電力を流通させる「ネガワット取引」の全体方針が決まった。これをもとに政府は運用ルールを整備して2017年4月の開始に備える。節電量の算定や事業者間で発生する調整金の計算方法を規定するほか、ネガワット取引の電力を卸電力取引所で売買できるようにする。

» 2016年07月15日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第63回:「節電した電力を売買するネガワット取引、実施スキームが見えてきた」

 日本全体の電力システムを抜本的に改革するために、政府が重視している施策の1つが「ネガワット取引」である。企業や家庭などの需要家が事業者からの要請に基づいて節電すると、節電量(ネガワット)に応じて対価を受け取ることができる(図1)。

図1 企業や家庭で節電した電力を活用する「ネガワット取引」の実施イメージ。BEMS:ビル・エネルギー・マネジメント・システム。出典:資源エネルギー庁

 夏の昼間に電力の需給状況が厳しくなる場合や、小売電気事業者が緊急に電力の調達を必要とする場合に、ネガワット取引を実施する。政府は2017年4月1日にネガワット取引を開始できるように、運用体制の整備を進めているところだ。すでに9項目にわたる全体方針を決定して、それをもとに詳細なルールを規定していく(図2)。

図2 ネガワット取引の全体方針に関する主要項目とルール整備。ERAB:エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス。出典:資源エネルギー庁

 ネガワット取引の運用ルールで最も基本的な点は、節電した電力の取引単位である。当面は需要家ごとの取引単位を1kW(キロワット)に、需要家からネガワットを集めて取引する事業者間の取引単位を100kWに設定する方針だ。節電した電力は30分単位で計算するため、1kW=0.5kWh(キロワット時)で換算する。

 取引の形態は事業者間で直接やりとりする方法のほかに、日本卸電力取引所(JEPX)を通じて市場でも取引することが可能になる。卸電力取引所では前日に取引する「スポット市場(1日前市場)」の場合には1000kW単位で、当日の「1時間前市場」では100kW単位で取引できる。

 ネガワット取引の電力が市場に流入することによって、卸電力取引所の活性化につながる期待がある。というのも電力の需給状況が厳しくなる局面では、取引所で売買する電力量(約定量)が少なくなって価格が上昇する。ネガワット取引の電力が加われば、売買が増えて価格の上昇も抑えられる(図3)。取引所ではネガワット取引に対応できる新しいルールを2016年度内に整備する予定だ。

図3 卸電力取引所(スポット市場)におけるネガワット取引の流入効果。kWh:キロワット時。出典:資源エネルギー庁
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