東京23区の中で人口が最も多い世田谷区でも、他県から再生可能エネルギーの電力を調達するプロジェクトを開始した。政令指定都市に匹敵する89万人の人口を抱える世田谷区が、150キロメートル離れた群馬県内で建設中の木質バイオマス発電所と連携を進める(図3)。
群馬県の北部にある人口3300人の川場村で、2017年1月にバイオマス発電所が運転を開始する。発電能力は40kW(キロワット)と小規模だが、この発電所の電力を世田谷区が調達する計画だ。川場村と世田谷区が選定した小売電気事業者を通じて、川場村で作った木質バイオマス発電の電力を世田谷区民が購入できる仕組みを用意する。
他県の再生可能エネルギーを東京都で活用する取り組みは水素にも広がっていく。福島県内で急速に拡大する太陽光発電や風力発電の電力を使って、CO2を排出しない水素を製造するプロジェクトが始まろうとしている。
国の産業技術総合研究所が運営する「福島再生可能エネルギー研究所」が中心になって、再生可能エネルギーの電力で水を電気分解してCO2フリーの水素を製造する試みだ。製造した水素は液化して、トレーラーやタンカーでエネルギーの大消費地である東京へ輸送する(図4)。
再生可能エネルギーの電力を大量に生み出せる福島県に新たな水素エネルギー産業を発展させるのと同時に、世界で最先端の水素タウンを東京都心に構築する壮大な構想だ。その実現に向けて福島県と東京都を含む四者が2016年5月に協定を締結した。両地域が連携して水素関連の研究開発を進めながら、民間企業を支援して新しい産業の振興につなげていく。
当面の目標は2020年の東京オリンピック・パラリンピックである。競技場や選手村に燃料電池を導入して、福島県産のCO2フリーの水素で電力と熱を供給する。選手村はオリンピック・パラリンピックの終了後に住宅や商業施設を整備して、未来に向けた水素タウンのモデル地域に転換する計画だ(図5)。
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