台風で使えなくなった町営の小水力発電所、パワーアップして5年ぶりに運転開始:自然エネルギー(2/2 ページ)
復活した白滝発電所で注目すべき点は、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)の高さである。小水力発電の設備利用率は標準で60%程度だが、白滝発電所では95%にも達する。水車発電機の能力をフルに発揮できる状態になっている。
図4 「S型チューブラ水車」のプロペラと断面。出典:三井三池製作所
高い設備利用率をもたらした要因として、水車発電機に「S型チューブラ水車」を採用したことが大きい。S型チューブラ水車はプロペラを回転させて発電する方式の一種で、プロペラの前後をS字状に水を流す構造になっている(図4)。
小水力発電に適用する水車にはさまざまな方式がある。発電量を左右する水量と落差をもとに選択するのが通例だ。白滝発電所の水流の落差は10メートル程度で、水量は毎秒1立方メートル以上を見込める。こうした条件に合致したのがS型チューブラ水車である(図5)。
図5 水量と有効落差による水車の選択例。出典:三井三池製作所
以前は渦巻き状に水を取り込む「横軸フランシス水車」を採用していた(図6)。国内の水力発電所では最も多く使われているタイプで、落差が10メートルを超える場合に適している。特に水量が安定していると効率よく発電できる。白滝発電所では水量の変動があることから、変動の影響を受けにくいS型チューブラ水車を選択して効率を高めた。
図6 「白滝発電所」の以前の設備。出典:日本工営
さらに従来よりも落差を大きくするために、発電所の建屋を半地下構造で建設して、水車発電機を低い位置に設置できるようにした(図7)。水車まで水を送り込む水圧管路は直径1.2メートルで、距離は515メートルに及ぶ。
図7 水圧管路・発電所・放水路の更新工事(画像をクリックすると拡大)。出典:日本工営
- 3メートルの落差でも30kWの電力、らせん水車で小水力発電に挑む
日本では導入例が少ない、らせん形の水車を使った小水力発電の実証実験が鹿児島県の薩摩川内市で始まった。川から農業用水を取り込む場所に水車を設置して、わずか3メートルの落差の水流で発電する。最大で30kWの電力を作ることができて、年間の発電量は30世帯分になる見込みだ。
- 村営の水力発電所をパワーアップ、売電収入が3倍以上に
宮崎県の山間部にある椎葉村で1954年から運転を続けてきた村営の水力発電所がある。61年ぶりに発電設備を一新して出力を680kWから750kWへ増強した。固定価格買取制度の認定を受けたことで発電した電力の売電単価が3倍以上になり、年間の売電収入は1億円を超える見込みだ。
- 酸性の水が流れる川を小水力発電に生かす、水車発電機はステンレス製
長野県の北部にある砂防ダムで小水力発電所が運転を開始した。ダムの直下に設置した水車発電機で750世帯分の電力を供給することができる。このダムを流れる川の水は酸性が強いために、魚が生息しにくく、飲み水や農業にも適さなかった。新たに小水力発電で地域の活性化に貢献する。
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