2016年4月の電力小売全面自由化により日本の電力市場は大きく変容を遂げようとしている。ただ世界には多くの電力自由化先行国が存在する。先行した国々ではどういう変化が起こったのか。こうした変化を紹介するとともに日本のエネルギー産業における将来像を探る。第1回では、フランスの電力自由化動向を紹介する。
フランスの発電の約75%は原子力によるものである。そしてこれら原子力発電所はかつてのフランス国有企業であり、かつ世界最大の電力会社EDF社(フランス語読みでウー・デー・エフ)の所有となっている。先進国の中で電気料金の最も安いフランスにおいて、国民のEDF社に対する愛着と信頼は非常に強い。このような条件下のフランス市場においては、電力自由化によって本当に自由競争が生まれるかどうかは課題であった。
第二次世界大戦後の1946年、フランス国内のほぼ全ての電力会社は国有化され、一社独占企業となった。これがEDF社である。EDF社は60年代から80年代にかけてフランスにある原子力発電所58基全てを建設してきた。生産、送電、配電、小売りまでを行うEDFのシステムはフランスでは非常に信頼されており、フランスの誇りでもあった。このように基本的なフランス国民の信頼という追い風を受けて、EDF社は社員への過剰な好待遇などの度重なるスキャンダルにもかかわらず、原子力発電施設の拡大と、電力小売りサービスの拡充を行い、順調に成長していった(図1)。
その一方で、ヨーロッパ全体では1996年にEUにより、2003年から段階的に電力市場自由化を進めるという法律が新たに取り決められた。EU加盟国であるフランスはもちろんこれに従わなくてはならなかった。
2000年 | 大口需要家向け市場(年間消費量が16ギガワット時以上)が自由化。 |
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2003年 | 年間消費量が7ギガワット時(GWh)以上までに下げられる。 |
2004年 | 全ての法人向け市場が自由化。 |
2007年 | 一般家庭も含め全ての市場が自由化。電力小売市場全面自由化となる |
しかし、フランスはこのEU主導による電力自由化に対してかなり消極的であった。なんとか現行の規制を保つべくフランスはEUと交渉を行うなど自由化への抵抗は強かった。自由化以降のEDFとそれを取り巻く動きには以下のようなものがある。
これらの動きがありつつも、フランスではEDFが電力市場を支配する状況は変わっていない。
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