無風だったフランスから日本は何を見いだすべきか電力自由化、先行国はこう動いた(1)(3/5 ページ)

» 2016年07月25日 09時00分 公開
[グザビエ・ピノン/セレクトラスマートジャパン]

EDF社の競合は?

 一般家庭向けの市場だけを考えた場合、EDF社の最大の競合はガスのかつての独占企業でもあったENGIE社、それに続くのがDirect Energie(ダイレクトエナジー)社である。(本当の)新電力のうちで、電力市場において大きな活躍を見せているのは、唯一Direct Energie社のみである。

 既に1千万人のガスの顧客を有するENEGIE社にとっては新たに電気契約向けの顧客を得ることはたやすい。一方、全くの新規参入企業であるDirect Energie社は市場認知度を高め、顧客得るために努力と工夫が必要であった。ただ、こうした企業努力の結果、現在のDirect Energie社はガス・電気合わせて160万人の顧客を持ち、順調に利益を上げている。フランスでの企業認知度もかなり高くなってきているといえる。

 他にもフランス市場への新規参入企業(新電力)は数多く存在しているが、そのシェアは極めて低い。その中でもいくつかを紹介しておく。

  • ベルギー発のエネルギー会社、Lampiris(ランピリス)社。同社も完全な新規参入企業
  • Enercoop社は100%再生可能エネルギーの新規参入企業。グリーンピースとのつながりがある
  • 100%再生可能エネルギー新規参入者としてはPlanete Oui(プラネットウィ)社などが存在する

フランスの電気料金プランはシンプルで分かりやすい

 フランスでは一般家庭向けのプランとして、2つのタイプの電気料金プランが存在する。以下に2つのタイプを紹介する。

  1. 「Base」と呼ばれるプラン:これは極めてシンプルなプランで、月々の料金がメーター(kVA、キロボルトアンペア)とkWh(キロワット時)あたりの料金によって決定されるというもの(フランスでは電力量料金は日本のように3段階制ではなく、電力量料金は単純にkWhあたりのみ)
  2. 「オフピークプラン」と呼ばれるプラン:これはピーク時の料金は高めに、オフピーク時の料金は安めに設定されている(この場合kWhあたりの値段は2種類)

 一方で電力市場自由化は、電気料金に新たな選択肢を新規参入者(新電力)によって加えることを可能とした。

  • インデックス料金:規制料金から常に決まった%分を割り引くというプラン。もし規制料金が上がれば、インデックスプランもそれに変動して上がるが、必ずその決まった%分は安くなるという仕組み。このプランはどれだけ安くなっているのか一目瞭然なので分かりやすくて無難な選択肢といえる(図3)
  • フィックスド料金:1、2もしくは3年とその電気料金が変わらないというプラン。逆に規制価格が安くなったとしても一定ということになる(図3)
  • 再生可能エネルギープラン:エコロジスト、原子力や化石燃料による発電を望まない人を対象にしたプランである
  • オンラインプラン:電話でのサポートや紙での請求書の送付のない完全にオンラインの場合さらに安くなるようなプランがある
photophoto 図3 左図はインデックス料金のイメージ。右図はフィックスド領域のイメージ。緑が料金プランで青が規制料金を指す 出典:セレクトラ

電力料金の内3分の1は税金が占める

 消費者の負担する税金は以下のようなものがあり、電気料金の約3分の1を占めている。

  • 付加価値税(VAT):VATが電気消費料金に20%またその他固定料金に5%かかっている(図4)
  • CSPE:日本の再生可能エネルギー賦課金に対応する「Feed-in tariffs」と、フランス本土とそれ以外のフランス領の電気料金差を埋める目的の税金がCSPEと呼ばれる(日本語にするならば「電力公共サービス拠出制度」)制度のもとかかっている
  • 地方税
  • CTA:電気、ガスなどの旧独占企業退職者の年金費用としてCTAという税金がかけられている
photo 図4 電力料金における税金の占める比率 出典:セレクトラ

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