再生可能エネルギーの出力抑制、九州本土で実施の可能性が高まる自然エネルギー(3/3 ページ)

» 2016年07月25日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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原子力を抑制すれば出力制御の回避も

 九州本土で太陽光発電に対する出力制御が現実味を帯びてきたが、その必要性には疑問が残る。というのも、出力制御の根拠になっている接続可能量の算定方法に問題点があるからだ。

 太陽光と風力発電の接続可能量は政府が決めた算定方法に基づいて、各電力会社が前年度の実績値をもとに算出している。その算定方法は各地域で1年間に最も需要が少なかった日の昼間を対象に、太陽光と風力の最大出力、原子力・水力・地熱の平均出力、火力の最低出力と揚水の最大出力を組み合わせて計算する(図9)。

図9 太陽光・風力発電設備の接続可能量(2014年度の算定値、画像をクリックすると拡大)。東京・中部・関西の3地域は対象外。出典:資源エネルギー庁

 ここで問題点が2つある。1点目は太陽光と風力発電の最大出力の計算方法だ。同じ九州本土でも場所によって天候にバラつきがあり、すべての発電設備が最大出力になることはあり得ない。それにもかかわらず最大出力の合計値をもとに、太陽光と風力発電の供給力を想定している。実際よりも過大に見積もることになる。

 2点目の問題は原子力発電の供給力である。現時点で運転していない原子力発電設備を含めて、震災前の30年間の設備利用率(最大出力に対する平均出力の比率)で供給力を想定している。九州電力の場合には「玄海原子力発電所」と「川内原子力発電所」の6基が対象になり、合わせて439万kWにのぼる供給力を織り込んだ(図10)。5月の電力需要が最小になる時期には、昼間の需要の50%以上を原子力で供給する想定だ。

図10 原子力発電による供給力(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 こうして原子力発電の供給力を過剰に積み上げて、それをもとに太陽光と風力の接続可能量を決定している。運転中の原子力発電所だけを対象に含める方法をとれば、太陽光と風力の接続可能量は大幅に増やせる。

 九州電力は運転開始から40年を経過した玄海原子力発電所1号機の廃止を2015年3月に決定した。これに伴って原子力発電の供給力が少なくなるため、太陽光発電設備の接続可能量は32万kW増えて、849万kWに拡大できるはずだった(図11)。

図11 原子力発電所の廃止に伴う太陽光発電設備の接続可能量の変更。出典:資源エネルギー庁

 ところが政府は新たに「30日等出力制御枠」と呼ぶ接続可能量を新たに規定して、九州本土の太陽光発電設備の接続可能量を従来の817万kWに据え置いた。同様に原子力発電設備1基の廃止を決めた中国電力の場合には、太陽光発電の接続可能量を102万kWも増やしている。

 九州電力と中国電力の違いは、すでに太陽光発電の接続可能量を超えているかどうかの差である。いったん接続可能量を超えて一部の発電設備に指定ルールを適用してしまった九州本土では、もはや接続可能量を増やして指定ルールの対象になる発電設備を変更できない(図12)。原子力発電の供給力を過大に織り込んだ弊害と言える。

図12 接続可能量(30日等出力制御枠)の見直しルール。出典:資源エネルギー庁

 もとより原子力発電は出力を調整することがむずかしく、日中・夜間を問わず一定の出力で運転することが前提になっている。需要に合わせて供給力を調整する役割は火力発電が担う。原子力を稼働させなければ、日中の火力発電の出力を高めに維持して、夏の点灯ピークにも対応しやすくなる。九州電力が準備を始めた出力制御は、川内原子力発電所の運転を止めれば回避できる可能性が大きい。

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