丸紅などによる現時点の計画では、最大の想定規模から少し縮小して能代港が80MW、秋田港が65MWになる予定である。合わせて145MWにのぼる洋上風力発電を事業化する見通しだ。建設に向けて環境影響評価の手続きに入った洋上風力発電の中では国内最大の規模になる。
洋上風力発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を30%として計算すると、年間の発電量は2カ所の合計で3億8000万kWh(キロワット時)に達する。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して10万6000世帯分に相当する電力を供給できる。
固定価格買取制度では洋上風力発電の買取価格が1kWhあたり36円(税抜き)に設定されている(図4)。発電した電力の全量を固定価格買取制度で売電すると、年間の収入は137億円にのぼる見込みだ。買取期間の20年間の累計では2700億円を超える。
現在のところ秋田洋上風力発電の資本金や出資比率は明らかになっていないが、事業化調査の段階では各社が数%ずつ出資する可能性が大きい。計画どおりに事業化できた場合には、建設費だけで1000億円を上回る規模になる。
洋上風力発電の開発は欧米諸国を中心に活発に進み、日本でも今後の拡大が期待できる。ただし日本の周辺海域は水深50メートル以上の場所が多いため、発電設備を海底に固定する着床式で建設できる場所は限られている。
その点で陸地に近い港湾区域は着床式の洋上風力発電の対象として有望だ。全国の港湾を管轄する国土交通省によると、北海道から九州まで8カ所の港湾で洋上風力発電の開発計画が進んでいる(図5)。このうち能代港・秋田港の洋上風力発電事業は電力会社が参画した初めてのプロジェクトである。
国土交通省は2016年5月に「港湾法」を改正して、発電事業者が港湾区域内で洋上風力発電の開発に着手しやすい制度を整備した。今後も各地の港湾に洋上風力発電が広がっていくことは確実で、電力会社を含む大手の発電事業者が参入する見通しだ。
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