一方の需給管理では、(1)広域機関に計画を提出、(2)日々の需給を管理・監視、(3)電力卸売市場において取引を実行、といった業務が中心となる。電力分野に初めて参入する事業者にとってはハードルが高いものの、事業の核になる業務であり、顧客管理と同様に競争力に大きく影響する。
中長期的に電力の小売事業を継続する場合には、需給管理の業務も自社で対応するのが理想的である。10年間にわたる中長期の計画を広域機関(電力広域的運営推進機関)に提出するとともに、日々の計画を提出しながら、翌日・当日の需給計画の策定と監視を実行しなくてはならない。供給面では日々の過不足電力量をもとに、卸市場などから電力を調達することも重要な業務となる。
図2 電力CIS(顧客情報管理システム)の外部連携(画像をクリックすると拡大)。OCCTO:電力広域的運営推進機関、JEPX:日本卸電力取引所、GW:ゲートウエイ
小売電気事業者にとっては、当初の体制づくりや運用のノウハウをどのように取得するのか、といった課題が数多くある。適正な収益を得るために、業務の立ち上げには特に慎重を要する。業務全般を効率よく実行するうえではIT(情報技術)の活用も欠かせない。次回は電力の小売業務に必要な顧客情報管理システム(CIS:Customer Information System)を構築するポイントを解説しよう。
連載第6回:「電力小売の顧客管理システム、いかにコストを最小に抑えるか」
平松 昌(ひらまつ まさる)
エネルギービジネスコンサルタント/ITコスト削減コンサルタント。外資系コンピュータベンダーやベンチャー事業支援会社、電力会社の情報システム子会社を経て、エネルギービジネスコンサルタントとして活動中。30年間にわたるIT業界の経験を生かしてITコスト削減支援および電力自由化における新電力事業支援を手がける。Blue Ocean Creative Partners代表
電力の契約変更はスイッチング支援システム、2016年3月に運用開始
小売電気事業者は需要家の意向を受けて契約を変更する場合に、全国どこでも「スイッチング支援システム」を利用して手続きを進めることが可能になる。すでにシステムの準備が整って連携テストに入る段階だ。小売全面自由化の1か月前にあたる2016年3月に本番の運用を開始する。
電力・ガス・電話のメガ競争が始まり、電気料金は確実に安くなる
いよいよ電力の小売事業が4月1日から全面的に自由になる。全国で7.5兆円にのぼる家庭の電力市場に向けて、ガス会社を筆頭に有力企業が続々と乗り出してくる。携帯電話やインターネットサービスと組み合わせたセット割引も始まり、電力会社と新規参入事業者の競争が各地域へ広がっていく。
小売営業ガイドラインが固まる、セット販売の説明や電源構成の開示など
政府は電力の小売営業に関するガイドラインの素案を策定した。小売電気事業者に家庭向け標準メニューの公表を求めるほか、ガスや電話とセット販売する場合の割引・解除条件の説明も必要とする。原子力や再生可能エネルギーを含む電源構成の開示は義務化せずに、「望ましい行為」にとどめる。
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