当面の需要家数が少ないケースでは、電力広域的運営推進機関のスイッチング支援システムが用意しているWEB入力機能を併用する方法もある。入力作業が二度手間になるものの、業務をこなすことは十分に可能だ。事業の立ち上げ当初は需要家の件数やサービスエリアの範囲にもよるが、基本的には少人数で拠点を1カ所に集中して業務を回すことが重要である。
業務の仕組みは可能な限りシンプルに、それを支えるシステムは必要最小限の仕組みを構築するのが望ましい(図3)。自社の既存システムとの統合などを含めて、電力小売事業の継続性が確定した時点で(おそらく事業開始から3年後くらいに)、本格的なシステム投資を検討してもよいと考えられる。
図3 電力CIS(顧客情報管理システム)の機能と外部連携(画像をクリックすると拡大)。OCCTO:電力広域的運営推進機関、JEPX:日本卸電力取引所、GW:ゲートウエイ
いずれにしても最低限の業務がきちんとこなせる仕組みを構築することを前提に、ITベンダーの提案に振り回されることなく、システムのコストは小さく抑えておきたい。将来の制度設計や事業戦略の変更に伴うシステムの改修にも備える必要がある。最短の期間と最小のコストでシステムを改修できる仕組みを作っておくことが、他社との競争に打ち勝つうえで欠かせない戦略になる。
次回からは各業務の詳細について、いかに最小限の仕組みを構築するか、といった観点を中心に解説していく。
連載第7回:「顧客獲得を決める受付業務、対面・コールセンター・WEBの仕組み」
平松 昌(ひらまつ まさる)
エネルギービジネスコンサルタント/ITコスト削減コンサルタント。外資系コンピュータベンダーやベンチャー事業支援会社、電力会社の情報システム子会社を経て、エネルギービジネスコンサルタントとして活動中。30年間にわたるIT業界の経験を生かしてITコスト削減支援および電力自由化における新電力事業支援を手がける。Blue Ocean Creative Partners代表
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