現時点でも家庭向けに都市ガスを販売できる事業者は全国で200社を超えている。市場規模は2.4兆円にのぼるが、そのうちの6割以上を東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの3社が占める(図4)。家庭までガスを送る導管の距離も3社の合計で50%以上に達する。新規に参入する事業者は調達したガスを大手ガス会社に委託して家庭まで供給しなくてはならない。
電力の市場と同様に寡占化が進んできた都市ガスの小売全面自由化で、最初から活発に動き出すのは電力会社だ。ひと足早く2016年4月に自由化が始まった家庭向けの電力市場は7.5兆円の規模があり、都市ガスと合わせると約10兆円になる。
都市ガスの原料になるLNG(液化天然ガス)の輸入量では、東京電力をはじめ電力会社が全体の6割以上を占めてガス会社を圧倒する。大半は火力発電用だが、電力の需要が縮小する中で、家庭向けのガス小売事業を伸ばせる余地は大きい。電力とガスのセット販売で顧客を開拓することが可能になり、対象顧客は全国で2900万件を超える(図5)。
そこで焦点になるのは、ガス会社が設定する託送料金である。電力と同様にガス会社の導管を利用するためには託送料金を支払う必要がある。東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガス・東部ガスの大手5社は7月29日に、2017年4月1日から適用する託送料金の認可を政府に申請した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.