ソニーと組んだ東京電力、「ビジネスモデルを根本から変える挑戦」電力供給サービス(2/2 ページ)

» 2016年08月25日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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2018年度実用化を目指す

 espotの実証では、一部店舗ではクレジットカードで決済できるが、基本的には専用プリペイドカード「espotカード」を事前購入して利用する形式になる(図2)。交通系ICカードなどの決済方法も検討できそうだが、冨山氏は「決済方法に関しては現在の方法が完成形とは全く考えていない。今回は、限られた時間の中で極力スピーディに実証を開始するためにこうしたプリペイドカードとなった。将来はスマートフォンのアプリを利用した決済など、さまざまな方法を検討している」と説明した。

図2 「espotカード」。5度数チャージされている状態で税別500円で販売する。追加チャージも可能だ(クリックで拡大)

 収益性を含めたビジネスモデルについても実証の中で検証していくことになる。また「espotを使っている時間は、その場所に人がいるということ。つまり、時間という軸をくわて、そのユーザーに合わせたクーポンの配信や周辺施設の情報提供などを行える可能性がある」(冨山氏)としており、マーケティングにも活用していきたい考えだ。東電EP、ソニービジネスソリューションズ、関電工の3社はespotを2018年度中の実用化を目指す計画である。

HEMS普及のブレイクスルーを生み出せるか

 東電EPが発表したもう1つの取り組みが、ソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、ソニーモバイル)とのスマートホーム分野におけるIoTを活用したサービスの開発だ。現時点では「開発に向けた基本合意書を締結し、業務提携の検討を開始」としており、具体的な開発内容はこれから詰める段階だが、ソニー側のスマートフォンなどの開発で培った商品や通信技術、サービス開発力などと、東電EPの持つ既存の顧客基盤、HEMSに関する技術を組み合わせて住宅向けIoTサービスを検討していく方針だ。2017年以降のサービス開始を予定している。

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東電EPの竹村氏

 スマートホームというと、その中核機器として思い浮かぶのがHEMSだ。しかし現時点での普及率は数%にとどまっている。東電EP 商品開発室 インキュベーションラボグループマネージャーの竹村和純氏は「東京電力ではこれまで大規模なHEMS導入実証などに参加しており、技術的な部分では既に完成形に近いところまできている。ではHEMSのようなサービスが一般家庭に入り込めているかというと、そうではない。エネルギーを最適利用できるというお題目だけでなく、何か新しい価値が必要になる。ソニーモバイルには、そういったわれわれにない新しい価値の部分で期待している」と語った。

 とはいえ、現時点で特定のHEMS機器などのハードウェアを開発するといったことは決まっていないという。「ハードウェアからではなく、まずはサービスの視点から検討を進め、その中で『こういう製品があったらいい』となる可能性はあると考えている。また、そのようにサービスを考える中で、他社のあの製品を採用すれば良いという判断があれば、協業を増やす可能性もある」(竹村氏)

 具体的なサービスの内容については「『見守り』や『セキュリティ』に関するサービスは考えられるが、今あるサービスを単純になぞるようなものにはしたくない。もう一歩進んで考えて、結果的にセキュリティの不安が消える、見守りしなくてよくなる、生活の悩みが解消されるといったIoTサービスを考えていきたい。そこで鍵になるのはコミュニケーションだと考えている」と説明した。

 「ユーザーが求めているのは電気そのものでは、家電などの電気によって動くモノやサービスから得られる価値だ。最近ではIoTの進展によって家電単体ではなく、家電と家電、さらに住宅までがつながる時代になってきている。そうしたなかで電力会社としても単に電気を提供するのではなく、顧客に対してこうしたIoTによる新しい価値を提供できるようにし、満足度を高めていきたいと考えている」(竹村氏)

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