規制価格と市場価格、スペインはダブルスタンダードが残る:電力自由化、先行国はこう動いた(2)(5/5 ページ)
スペインにはいくつかのエネルギー価格比較会社が存在している。例えば、業界ナンバーワンの「comparadorluz.com」(各国でエネルギー料金比較サービスを提供するセレクトラ社のスペイン向けサービス)はそのうちの1つである。スペインの人々は通常、何か特別な機会がない限り特にエネルギー(電気・ガス)価格の比較をしない国民性ではあるが、少しずつ自発的にエネルギー料金の比較をする流れも生まれてきている。
- エネルギー小売り業者は、PVPC料金により近い価格を設定し、その価格からさらに契約容量、また消費量によって割引するような電気料金システムを提供している
- スペインではほとんどの需要家は電気もしくはガスの契約を、電話かもしくは地元の営業所に行って行っている。しかしながら、最近は多くの電力会社がオンラインでの契約にのみ有効な「特別割引」を行っているため、今後はさらにインターネット経由での契約が増えていくと考えられる
まず長期的な計画として、2018年12月31日までに全てのアナログメーターをデジタルメーターに変えるというミッションが電力会社に課せられている。結果として、現在PVPCで電気料金を支払っている消費者が毎時間ごとに異なる電気料金システムで請求に切り替えわるようになるだろう。スマートメーターが広く導入され「毎時間ごとの料金システム」が完全に規制料金市場に浸透するのは時間の問題だろう。
「時間ごとの電気料金システム」を搭載したこの規制料金体制ははまだ続いていくと予想している。同時に、自由市場における電力供給者は価格を微調整し、より良い価格と割引を提供することで時間ごとの電気料金に対抗しようと試みていくべきである。
連載「電力自由化、先行国はこう動いた」の目次
パリ政治学院・コロンビア大学にて修士号。東京大学に留学経験を持つ。戦略コンサルタント業務に従事したのち、在学中に立ち上げた電気・ガス料金比較サービス会社セレクトラの業務に本格的に携わり、同社をヨーロッパ最大手に成長させる。現在フランスを中心に欧州7か国でサービスを展開、欧州での経験をもとに2016年5月に日本(セレクトラ・ジャパン:http://selectra.jp/)でのサービスを開始。
- 無風だったフランスから日本は何を見いだすべきか
2016年4月の電力小売全面自由化により日本の電力市場は大きく変容を遂げようとしている。ただ世界には多くの電力自由化先行国が存在する。先行した国々ではどういう変化が起こったのか。こうした変化を紹介するとともに日本のエネルギー産業における将来像を探る。第1回では、フランスの電力自由化動向を紹介する。
- 電力自由化は期待ほどには何も起こさない――フランスの場合
2016年4月1日の電力小売全面自由化を控え盛り上がりを見せる電力小売市場。「電気料金が下がる」「再生可能エネルギー中心の小売電気事業者が増える」などさまざまな市場の変化に期待が高まっている。しかし、その期待は裏切られるかもしれない。電力自由化で先行するフランスの状況を、同国で電力比較サイトを運営するセレクトラの共同創業者であるグザビエ・ピノン氏に電力自由化の動向を聞いた。
- 電力自由化は“バラ色の未来”をもたらすわけではない(前編)
電力自由化により、電気事業者はもうかり、消費者は安い電気代を選べる――。そんなバラ色の将来像は夢物語に終わるかもしれない。グローバルでエネルギー事業を展開するシーメンスは、電力システム改革における今後の展望と課題について解説した。
- 電力全面自由化が再生可能エネルギーに与える影響は何か
2016年4月1日からの電力小売全面自由化を控え、発電事業者や小売事業者はどういう変化を意識し、準備を進めていかなければならないのか。新たに電力小売に参入したLooopは「電力自由化時代における再生可能エネルギーの位置付けと展望」と題したプレスセミナーを開催。電力小売全面自由化を受け、事業者の状況や生活者の意識がどう変わるのかを有識者のパネルディスカッションによって紹介した。
- 似て非なる電力とガスの小売自由化、市場開放の共通点と相違点
電力に続くガスの小売全面自由化が2017年4月に始まる。全国に3000万の需要家を抱える都市ガスの市場開放に向けて電力会社の動きも活発になってきた。政府は電力と同様に料金規制の撤廃や託送供給の拡大を推進するが、都市ガスならではの同時同量制度や導管の運用ルールに課題が残る。
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