高層ビル屋上に巨大な「振り子」、長周期の地震動対策に省エネビル

南海トラフ沖地震の発生が懸念される中で、高層ビルの長周期振動対策の重要性が高まっている。大成建設は三菱重工メカトロシステムズと共同でこうした長周期地震動による高層建造物の揺れを低減できる「T-Mダンパー」を開発した。屋上に設置する振子式の装置だ。

» 2016年08月29日 06時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 大成建設は2016年8月25日、三菱重工メカトロシステムズと共同で、長周期地震動による超高層建物の揺れを低減する屋上設置型の振子式大型制振装置「T-Mダンパー」を開発したと発表した。

 2011年の東北地方太平洋沖地震では、長周期地震動により震源から遠く離れた東京や大阪の超高層建物が大きく揺れ、天井仕上げ材が落下するといった被害が生じた。また、2016年6月には、国土交通省より南海トラフ沖地震を想定した長周期地震動に関する大臣認定での運用強化が正式に発表され、長周期地震動対策はさらに重要性を増している。

 大成建設はこれまで長周期地震動をはじめ直下型などの地震動に対して有効な変位依存型オイルダンパーを用いた「T-RESPO構法」を開発し、東北地方太平洋沖地震でその効果を実証してきた。さらに今回、長周期地震動特有のゆっくりとした揺れに対し、より大きな低減効果を発揮できる屋上設置型の制振装置であるT-Mダンパーの開発に取り組んだ。このT-Mダンパーは、従来超高層建物の風揺れ対策用として使用されている多段振子式装置を、地震の揺れ対策用に改良したものだ(図1)。

図1 開発した「T-Mダンパー」のイメージ 出典:大成建設

 同制振装置は、設置した重りの動く範囲を従来より広げて約4メートルとし、また設置するオイルダンパー数も増やすことで、地震エネルギーの吸収量を増大させ、地震による大きな揺れを効果的に低減できるようにしている。

 また、装置1台当たりの性能を向上させたことで、必要な装置台数(重りの総重量)を少なくし、併せて躯体補強が軽減されるため、コストも抑えられるとしている。この他、設置工事が屋上に限定されることで、景観の阻害、有効床面積の減少などが避けられるため、建物利用者への影響が小さいメリットもあるという。

 今後同社では超高層建物に対して、長周期地震動対策として有効なT-Mダンパーと長周期地震動だけでなく直下型地震などを含め広範な地震動に効果を発揮するT-RESPO構法の2つの制振技術を、新築・改築に限らず、適材適所で活用していく予定だ。

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