原子力の地にバイオマス発電が拡大、木材と下水から電力を作るエネルギー列島2016年版(20)福井(2/3 ページ)

» 2016年09月06日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

浄化センターにバイオガス発電が広がる

 福井県内では木質バイオマス発電に加えて、下水の汚泥を利用したバイオガス発電の導入プロジェクトが広がってきた。越前市の「家久(いえひさ)浄化センター」では2017年度にバイオガス発電設備の運転を開始する予定だ(図4)。

図4 「家久浄化センター」の外観(左)、バイオガス発電設備の建設予定地(右)。出典:越前市建設部

 浄化センターには下水を処理する工程で大量のバイオガス(消化ガス)が発生する。従来はバイオガスを自家消費するだけだったが、最近は全国各地の下水処理場でバイオガスを利用した発電事業が活発に始まっている。家久浄化センターを運営する越前市は民間の事業者に委託して発電事業を実施する。

 バイオガスの発生量は年間を通じて一定ではない(図5)。気温や地域の特性によって影響を受ける。さらに自家消費する量も季節によって変わるため、発電に利用できるバイオガスの量は常に変動する。発電設備の導入にあたっては、バイオガスの利用可能量を想定して最適な発電能力を決めることになる。

図5 家久浄化センターのバイオガス発生量と利用可能量(2015年度)。単位:立方メートル/日。出典:越前市建設部

 家久浄化センターのバイオガス発電は公募で選ばれた県内企業のマルツ電波が建設・運営を請け負う。越前市はバイオガスの売却と発電設備の土地使用料を合わせて年間に最大90万円を得られる見込みだ。発電事業を実施する20年間の累計では1800万円になり、余剰のバイオガスが新たな収益をもたらす。

 これまでにマルツ電波は福井県内の2カ所の浄化センターでバイオガス発電設備を稼働させている。福井市の「日野川(ひのがわ)浄化センター」と坂井市の「九頭竜川(くずりゅうがわ)浄化センター」で2014年に運転を開始した。発電能力が25kW(キロワット)の発電機をバイオガスの利用可能量に合わせて複数台の構成で導入している。

 日野川浄化センターでは12台のバイオガス発電機を導入して、合計で300kWの発電能力がある(図6)。年間に8600時間(約358日)の稼働で228万kWhの電力を供給できる。一方の九頭竜川浄化センターは10台の構成で208万kWhの電力量を想定している。それぞれで一般家庭の600世帯程度の使用量に匹敵する。

図6 「日野川浄化センター」のバイオガス発電設備。出典:マルツ電波

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