このところ福井県では再生可能エネルギーの中でも、風力・中小水力・バイオマス発電の導入事例が増えてきた。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では、風力が全国で19位、中小水力が26位、バイオマスが25位に入っている(図7)。
風力発電では日本海に面した福井港の先端に、北陸電力グループが4基の大型風車を建設中だ(図8)。1基あたりの発電能力は2MWで合わせて8MWになる。2017年1月に運転を開始する予定で、年間の発電量は1440万kWhを見込んでいる。一般家庭の4000世帯分に相当する。
小水力発電のユニークなプロジェクトもある。原子力発電所が数多く集まる若狭湾から内陸に10キロメートルほど入った山間部で、「若狭瓜割(うりわり)エコビレッジ」の開発が進んでいる。美しい滝の周辺に、環境と共生することを目指して新しい街をつくる計画だ(図9)。
住宅の屋根に太陽光パネルを搭載する一方、滝と住宅の近くに小水力発電設備を導入してエネルギーの地産地消を推進する(図10)。環境に優しい生活スタイルに魅力を感じる若者が全国から移住してくることを期待している。
福井県のエネルギー政策は現在も原子力が中心だが、発電所が立地していない地域では再生可能エネルギーの取り組みが活発になってきた(図11)。原子力と比べれば発電規模は圧倒的に小さい代わりに、大規模な停電を引き起こす心配がなく、深刻な放射能汚染のリスクも避けられる。原子力の再稼働が滞る間に、再生可能エネルギーの電力が山間部を中心に浸透していく。
2015年版(20)福井:「バイオマス発電所が森を潤す、原子力の日本海沿岸に風力と波力も」
2014年版(20)福井:「小水力発電で町おこし、原子力から離れた内陸部に新たな電源」
2013年版(20)福井:「原子力から太陽光や小水力へ、エネルギーの多元化に未来を託す」
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