送配電ネットワークの利用料、発電事業者も2020年度から負担へ動き出す電力システム改革(68)(2/2 ページ)

» 2016年09月06日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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地産地消などを対象に割引制度も検討

 電力・ガス取引監視等委員会が検討している新しい費用負担の仕組みは、小売電気事業者を対象にした託送料金に加えて、発電事業者にも発電設備の容量に応じて課金する方法である(図5)。すでに欧州ではイギリスやフランスをはじめ各国が発電設備に課金する制度を導入している。

図5 送配電ネットワークの費用負担の変更イメージ。NW:ネットワーク。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 送配電ネットワークの費用は発電設備の立地場所によって変わる。このため地域ごとに料金を変える案も検討していく。現在でも地域によって託送料金を安くする制度はある。「需要地近接性評価割引制度」と呼ぶもので、需要の多い地域に立地する発電設備から電力の供給を受ける場合などを対象に託送料金を割り引く(図6)。

図6 「需要地近接性評価割引制度」の適用対象地域(画像をクリックすると理由も表示)。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 典型的な例は東京電力の管内で、供給力に対して需要の多い1都4県が割引制度の対象に指定されている。このほかにも新しい発電設備が加わることによって送電時の電力の損失を低減できるような地域は割引制度の対象になる(図7)。

図7 送配電ネットワークの潮流の変化。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 今後は現行の割引制度を見直しながら、送配電ネットワークの運用コストを低減させる効果が期待できる利用方法に幅広く適用していく方針だ。発電した電力を地域内で消費する地産地消のケースが好例で、送配電ネットワークを広域で利用しないことから運用コストの低減につながるとみなされる(図8)。

図8 送配電ネットワークの高度な利用例と託送料金インセンティブ。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 送配電ネットワークの費用負担の見直しに関しては、2016年度中に基本方針をとりまとめる。2017年度には料金の算定方法を含めて詳細な制度の設計を完了させる。その後の2年間で電力会社のシステムの改修など準備を進めて、2020年度から新しい料金体系を導入する予定だ。

 2020年度には電力会社の送配電部門を分離・独立させる発送電分離を実施することが決まっている(図9)。この段階では電力会社の発電部門も他の発電事業者と対等の立場で競争する必要がある。送配電ネットワークの運用コストを発電事業者と小売電気事業者が適切に負担する仕組みは発送電分離にも欠かせない。

図9 発送電分離(送配電部門の中立化)の実施イメージ。出典:資源エネルギー庁

第69回:「電気料金に影響する託送料金の見直し、電力の地産地消を促す体系に」

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