ワイヤレス充電で走るEVバス、課題の「妨害電波」の抑制に成功電気自動車(2/2 ページ)

» 2016年09月07日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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送電量を損なわずに法基準をクリア

 こうした電磁波の課題を解決するため、東芝はワイヤレス急速充電システムにおいて、送受電パッドを22kWの2系統の装置に分け、2カ所から逆相で送電する方法を採用した。送受電パッドを2つに分けることで、それぞれが放射する電磁波が打ち消し合い、不要な電磁波を抑制するという仕組みだ(図3)。

図3 2系統に分け、逆走で送電することでそれぞれから放射される電磁波が打ち消し合う 出典:東芝

 ただし、2系統のパッド間で干渉結合があると、放射される電磁波の大きさと位相がずれ、打ち消し効果が低減してしまう。これを防ぐため東芝は2系統のパッド間の干渉が小さくなる最適な位置関係を検証。2系統のパッドの相対位置を平行に回転させたとき、パッド間の干渉結合の方向が反転する性質があり、干渉結合の方向が反転するときに干渉結合が必ずゼロになる点に着目した。そして不要結合がゼロになる相対角度を電磁界シミュレーターで割り出し、パッド間で生じる干渉の抑制を実現した。

 この技術により、距離が10メートル離れた位置における電磁波の大きさを約10分の1に抑制することに成功。送電量を44kWから損なうことなく、高周波利用設備としての許容値を満たすことが可能となった。

 開発した妨害電波の抑制技術は、既に実証走行中のEVバスのワイヤレス急速充電システムに適用している(図4)。この実証走行は2016年末頃まで実施予定で、東芝では終了後にその結果を踏まえて技術の課題を抽出し、早期の実用化を目指す方針だ。なお、開発した妨害電波の抑制技術の詳細は、米国ミルウォーキーで開催される国際学会「IEEE ENERGY CONVERSION CONGRESS AND EXPOSITION」(ECCE)にて、同年9月19日(現地時間)に発表する。

図4 EVバス側に設置した受電システム。2つに分けた受電パッドを、斜めかつ平行に取り付けた 出典:東芝
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