さらにIEAは日本の電気料金が高水準で、しかも安定していないことを問題点の1つとして指摘した。化石燃料の輸入価格が大きく変動するためで、CO2排出量の抑制と合わせて対策の必要性を強調している。
加盟国のうちIEAがデータを入手できた20数カ国の電気料金を比較すると、日本は企業向けが2番目に高く、家庭向けは8番目に高い(図4)。税金を除くと家庭向けの料金も最高レベルの水準になっている。改善には電力市場の自由化を徹底的に進めて、競争状態を作り出す必要があるとIEAは指摘した。電力会社の発電と送配電の分離を進める一方、健全な競争を阻害するような企業合併を防止するように求めている。
IEAはエネルギー分野の技術開発において、日本が引き続き先導的な役割を担うことにも期待をかける。再生可能エネルギーやスマートグリッドをはじめ、CO2排出量を削減する次世代石炭火力(クリーンコール)などの低炭素技術の開発・導入を注力すべきテーマに挙げた。
日本がエネルギー分野の研究開発・普及に投じた国家予算は、2014年に3460億ドル(約36兆円)にのぼるとIEAは推定している。これは名目GDP(国内総生産)の488兆円に対して0.7%に相当する。IEA加盟国の中ではノルウエイとフィンランドに次いで3番目に高い比率だ(図5)。
ただし内訳を見ると、原子力が全体の47%を占めていて、IEAがデータを収集できた23カ国の中では最大の国家予算を費やしている。原子力発電の比率が80%に達するフランスさえも上回る。その影響で再生可能エネルギーには21%しか投入できていない。
IEAの分析では、1990年から2014年までの25年間を平均すると、日本のエネルギー分野の研究開発・普及費の68%が原子力に使われている(図6)。震災が発生した2011年からは原子力が減って再生可能エネルギーが増えているものの、国のエネルギー戦略に見合っていないことは明らかだ。
IEAは日本がCO2排出量を削減するために、原子力発電所の再稼働を進めるべきだと提言している。ただし安全性の確保に加えて、国民に十分な情報提供を通じて理解を得ることの重要性を強調した。原子力に関する国の意思決定の情報を国民に提供したうえで、原子力の役割を中立性と透明性をもって国民と対話しながら決めていくように求めている。
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