木質バイオマス発電が急拡大、液晶の町から歴史の地までつなぐエネルギー列島2016年版(24)三重(2/4 ページ)

» 2016年10月04日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

沿岸部には20MWの木質バイオマス発電所

 沿岸部に工業地帯が広がる津市でも、木質バイオマス発電所の「グリーンエナジー津」が2016年8月に稼働している。橋梁など巨大な建造物を製造するJFEエンジニアリングの工場の構内に建設した(図5)。発電能力は20MWに達して、年間に1億5800万kWhにのぼる電力を供給する。実に4万4000世帯分の電力になり、県庁所在地の津市の総世帯数(12万4000世帯)の3分の1をカバーできる。

図5 「グリーンエナジー津」の建設地と燃料供給ルート(左)、発電設備の全景(上)。PKS:パームヤシ殻。出典:JFEエンジニアリング

 バイオマス燃料は地域で発生する間伐材のほかに、東南アジアから輸入するパームヤシ殻を併用する。2種類の燃料を効率よく混焼させるために、JFEエンジニアリングが製造する「循環流動層ボイラー」を採用した(図6)。ボイラーの中で燃料と空気を流動させながら燃焼する方式で、グリーンエナジー津では発電効率を30%以上に高める。

図6 木質バイオマス燃料(上)、「循環流動層ボイラー」の仕組み(下)。出典:JFEエンジニアリング

 津市と多気町のあいだに位置する松阪市には、ひと足早く2014年11月に「松阪木質バイオマス発電所」が運転を開始している(図7)。地元の林業が中心になって設立した三重エネウッドが運営する。発電能力は5.8MWで、年間に5.7万トンの木材を燃料に利用している。

図7 「松阪木質バイオマス発電所」の全景。出典:三重エネウッド

 松阪木質バイオマス発電所は隣の町にある多気バイオパワーと共同で、燃料を長期にわたって調達できる体制を整備した。木質バイオマス燃料を調達する共同企業体(三重バイオマスJV)を2016年4月に設立して、2つの発電所で使用する年間15万トンの木質バイオマスを一括で収集して木質チップまで製造する。燃料の安定供給に加えて、地域の林業の活性化につなげる狙いもある。

 三重県内には世界遺産に登録されている熊野古道が通っている。この一帯に新たな流通の仕組みを構築する「熊野新道〜木質バイオエネルギー地域自立システム」の取り組みが進行中だ(図8)。歴史ある熊野地域の森林で発生する間伐材を流通させて、地域の活性化を図る。このシステムの中に木質バイオマス発電所も組み込まれている。

図8 「熊野新道〜木質バイオエネルギー地域自立システム」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:三重県雇用経済部

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