再生可能エネルギーを利用した小規模の発電設備は農業用水路にも拡大中だ。琵琶湖の北側に広がる湖北地区を流れる用水路には、「落差工(らくさこう)」と呼ぶ水流の速さを調整するための階段状の構造が随所に設けられている。この落差工が生み出す小さな水力エネルギーを使った発電設備が相次いで運転を開始した。
「5号落差工」に設置した15kWの発電設備が2015年7月に稼働したのに続いて、「10号落差工」の10kWの発電設備が同年9月に稼働した(図5)。それぞれ1メートル程度の水流の落差を利用して発電する。年間の発電量は2カ所を合わせて14万kWhを見込んでいる。一般家庭の使用量に換算すると約40世帯分に相当する。
この小水力発電プロジェクトは大阪ガスグループが建設して運営する。発電した電力を固定価格買取制度で売電する一方、農業用水路を管理する地元の土地改良区に用水路の使用料を支払うスキームだ。民間企業が実施する小水力発電で固定価格買取制度の対象になった全国初のケースである。土地改良区にとっては用水路の維持管理費を低減できるのと同時に、災害時には独立の電源として利用できるメリットがある。
湖北地区の農業用水路では、滋賀県が主導する小水力発電所の建設プロジェクトも進んでいる。用水路の上流にある1〜4号落差工に発電所を建設する計画だ(図6)。水流の落差は同様に1メートル程度で、1カ所あたり11〜15kWの電力を供給できる。2017年3月までに運転を開始する予定で、4カ所を合わせた年間の発電量は26万kWhを想定している。一般家庭の72世帯分の電力に相当する。
落差工に設置する水車発電機には、水流の落差が小さくても効率的に発電できるクロスフロー水車を選択した(図7)。円筒形の水車が回転して発電する仕組みで、縦軸と横軸の2種類がある。最初に稼働した5・10号落差工には縦軸の水車、1〜4号落差工には横軸のクロスフロー水車を導入する。
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