今回研究グループは、順セル構造のホール輸送層に用いるピリジン系の添加剤TBPに注目した。実験結果の解析によりTBPとペロブスカイト材料が化学反応を起こすことが安定性を低下させる大きな原因となっていることを明らかにした。さらに赤外分光やX線回折による分析の結果、この反応は主にピリジン環にある窒素原子とペロブスカイト結晶の間で生じることも分かった。
そこでこの反応を防ぐために、窒素原子の隣接位置にアルキル基を導入した。これにより立体障害効果 (2つの反応原子を空間的に近づくことを防ぐこと)が生じ、この化学反応を抑制することに成功。その結果、今回開発した新規ピリジン誘導体を用いたペロブスカイト太陽電池は、暗所において1000時間を経ても性能の低下が認められなかった。さらに連続光照射下においても、初期の変換効率から85%まで劣化する時間が、従来の添加剤では25時間弱だったものが、今回開発した新規添加材を使用すると150時間まで伸ばすことができ、安定性が6倍以上改善したという。
研究グループは今回の成果について「ペロブスカイト太陽電池の劣化メカニズムの解明による新規材料開発というアプローチが、安定性の向上に非常に有効であることを実証したもの」としている。今後も引き続きペロブスカイト太陽電池の安定性および新規材料の開発を進め、早期の実用化を目指す方針だ。
なお、今回の研究成果の一部は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が実施中の「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトの一環として得られたもの。成果の詳細は2016年10月5日(現地時間)に英「Advanced Materials」誌のオンライン版で公開されている。
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