日本の太陽光発電を増やす、市場構造を変えてコスト低減:蓄電・発電機器(3/3 ページ)
固定価格買取制度で太陽光発電の導入量が急速に拡大した結果、早くも運用面の問題が顕在化してきた。政府が調査したところ、住宅用(10kW未満)や非住宅用の低圧(10〜50kW未満)の太陽光発電設備では、運転開始後に適切なO&M(運用管理・保守)を実施していないケースが大半だった。
O&Mを怠ると故障に気づかず、発電量が低下して長期の安定稼働はむずかしくなる。今後の太陽光発電で目指すべき自家消費モデルも成り立たなくなってしまう。これまでに買取制度の適用を受けて運転を開始した太陽光発電設備のうち、導入量の半分以上を低圧(50kW未満)が占めている(図8)。大量の設備が長期にわたって安定稼働できなくなると深刻である。
図8 太陽光発電の規模別の導入量。出典:資源エネルギー庁
この点でもコストの問題を解消しなくてはならない。非住宅用の太陽光発電の運転維持にかかるコストを日本とドイツで比較すると、実に日本では2.5倍以上も高い(図9)。大半はO&Mのコストである。
図9 非住宅用の太陽光発電の運転維持コスト比較。出典:資源エネルギー庁
研究会は日本でO&Mのルールが確立していないことを高コストの要因に挙げている。O&Mのサービス内容がばらばらで、価格の水準が安定しない問題を指摘した。一方ドイツをはじめ欧米の先進国では、発電設備を資産として管理する専門の事業者がO&Mを含めて一括に実施する体制に変わってきている(図10)。
図10 非住宅用の太陽光発電の運用管理・保守体制。日本(上)、ドイツ(下)。それぞれ画像をクリックすると拡大。PV:太陽光発電、EPC:設計・調達・建設。出典:資源エネルギー庁
事業者の管理センターから遠隔で発電量の監視・分析を実施して安定稼働を維持する。数多くの発電設備を集中管理して効率を高めることでコスト削減も可能になる。日本でもO&Mのノウハウを蓄積した事業者の増加が待たれるところだ。
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