発電コストは初期の導入費と稼働後の運転維持費で決まる。現在の日本の発電コストを海外の主要国と比べると、導入費(資本費)が1.4〜1.7倍になっている(図5)。稼働後の運転維持費も同様だ。加えて風況で決まる設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)が低い。その結果として1kWhの電力を作るコストが2倍近い水準まで高くなってしまう。
日本も海外も導入に必要な資本費の4割以上を風車が占める(図6)。研究会の分析によると、世界各地で2010年から風車の価格低下が進んだが、日本では逆に上昇した。2000〜2004年の市場拡大期と比べて1.5倍にはねあがっている。
風車の価格が上昇した最大の要因は、円安による輸入価格の変動だ。発電用の大型風車は海外メーカーの製品が圧倒的に多く、円高か円安かによって価格が変動する。規模の大きい風力発電では開発期間が4年以上もかかるため、発電事業者にとっては実際に風車を購入するまで採算性を正確に予測できない(図7)。
解決策は2つある。1つは国産メーカーが価格競争力のある風車を開発して国内・海外の市場に投入することだ。そうなれば日本の発電事業者は風車の輸入価格の変動に悩まされずに済む。最近では日立製作所が5000kW級の大型風車を製品化して導入実績を増やし始めた。
もう1つの解決策として風力発電の開発期間を短くする。発電能力が7500kW以上の風力発電所を建設する場合には、事前に環境アセスメントを実施しなくてはならない。従来は環境アセスメントに3〜4年かかっていたが、政府は1.5〜2年程度まで期間を短縮する準備を進めている。実証事業を通じて有効性を検証中で、2018年度から実施できる見通しだ。
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