日本初の波力発電所が完成、海中で波を受けて陸上に送電自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年10月26日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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発電コストの低減が最大の課題に

 久慈港の波力発電の実証プロジェクトは2012〜2016年度の5年間で実施する計画だ。2013年度に玉の脇漁港の周辺で波の状況を観測した後に、発電装置の製造に着手した。久慈市内の工場で2016年1月に発電装置が完成して、9月上旬にクレーン船で玉の脇漁港まで曳航して設置工事に入った。9月下旬には試験運転を開始する一方、東北電力の配電線に接続する工事も進めた(図5)

図5 設置工事中の様子。出典:東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト

 発電所は防波堤から通路でつながっていて、そこを通って陸上の配電線まで接続する。防波堤の横には電力を変換するパワーコンディショナーや電圧を調整するトランスが設置されている。発電した直流の電力を交流に変換して配電線に供給する流れだ(図6)。

図6 波力発電装置の設置場所と配電設備。出典:東京大学

 プロジェクトチームは2017年3月まで実証運転を続けて、実際の発電量や装置の制御方法を検証する。プロジェクトが完了した後も、東京大学を中心に発電機メーカーなどが参画して実証運転の継続と装置の改良に取り組む予定だ。

 最大の課題は発電コストを低減することにある。現状では1kWhの電力を作るコストが60円程度と高く、発電装置の軽量化などを通じてコストを引き下げていく必要がある。国の目標は波力発電を含む海洋エネルギーのコストを2020年代に20円/kWh以下に抑えることである。その目標に向けた第一歩が岩手県の漁港から始まった。

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