世界の再生可能エネルギーさらに加速、今後5年間の増加量を13%上乗せ:自然エネルギー(2/2 ページ)
IEAは再生可能エネルギーの種類別の発電量も比較している。2015年の時点では水力が71%を占めて圧倒的に多い。従来からの大規模な水力発電による電力を含んでいるためだ。次いで風力が15%、バイオマスが8%で、天候によって発電量が変動する太陽光は4%にとどまる(図4)。
図4 再生可能エネルギーの種類別の発電量比率(2015年)。上から時計回りに、水力、バイオマス、風力、太陽光、その他。出典:IEA
この比率が2021年になると大きく変わる。水力が59%まで低下する一方、風力が21%に、太陽光も9%に上昇する(図5)。再生可能エネルギーによる発電量は2015年から2021年のあいだに7兆6000億kWh以上も増加する見込みで、そのうちの約3分の2を風力と太陽光がもたらす。
図5 再生可能エネルギーの種類別の発電量比率(2021年、予測)。上から時計回りに、水力、バイオマス、風力、太陽光、その他。出典:IEA
世界各地で風力と太陽光が伸びる最大の要因は発電コストの低下にある。事業用の太陽光発電のコストは2011年の時点では1kWhあたり30〜50円の水準だったが、2015年には15円前後まで下がった。さらに2021年までに25%のコストダウンによって10円前後の水準になる(図6)。
図6 事業用の太陽光発電のコストと主要国の入札価格。単位:米ドル/メガワット時(=約0.1円/キロワット時)。出典:IEA
日本では現時点で世界の水準を上回る20円程度だが、同様のコストダウンを実現できれば2021年には15円程度まで下がる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が太陽光発電の長期ロードマップで掲げている2020年の発電コスト14円と同等になる。海外では入札制度によって発電コストの低下が加速する可能性もある。日本でも2017年度に太陽光発電の入札制度を開始することから、コストダウンの効果が注目される。
IEAは風力発電のコストも2015年から2021年に15%低下すると予測している。洋上風力ではヨーロッパの先進国を中心に40〜50%のコストダウンが期待できる。ただし太陽光・風力ともに各国の政策や金融市場の支援が続くことを前提にしたポジティブな予測である。
- 再生可能エネルギーの発電設備が世界で8%増加、過去最高の伸び率
2015年に全世界で1.5億キロワットにのぼる再生可能エネルギーの発電設備が運転を開始した。前年から8.3%増えて過去最高の伸び率だ。種類別では風力・太陽光・水力の順に多く、全体の4割以上を風力が占めた。日本は過去6年間に13万件の特許を取得して世界1位の技術力を見せる。
- 世界規模で進むエネルギーシフト、化石燃料から再エネ・省エネに投資が拡大
IEAがまとめた2015年の世界全体のエネルギー投資額は前年から8%減の1.8兆ドルだった。石油・ガスの開発投資が25%も減少する一方で、再生可能エネルギーと省エネルギーに加えて電力ネットワークに対する投資額が増加した。CO2削減に向けてエネルギーシフトが全世界で加速していく。
- 日本の太陽光発電を増やす、市場構造を変えてコスト低減
再生可能エネルギーの中で最も導入しやすいのが太陽光発電だ。今後も長期的に導入量を拡大するために、政府の研究会が太陽光発電の競争力を強化する方向性をまとめた。最大の課題は導入費と運転維持費を低減することで、日本特有の複雑な市場構造が高コストの一因になっていると指摘した。
- 風力発電のコストを世界水準の8〜9円に、FIT依存から自立へ
世界に広がる再生可能エネルギーの中で導入量が最も多いのは風力発電だが、日本では伸び悩んでいる。発電コストが世界の平均と比べて1.6倍も高いことが大きな要因だ。2030年までに発電コストを8〜9円/kWhへ引き下げて、固定価格買取制度(FIT)に依存しない電源へ自立させる。
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