改革は素早く、切り替えは“のんびり”ーーオーストリアの電力自由化電力自由化、先進国はこう動いた(4)(2/5 ページ)

» 2016年11月08日 07時00分 公開
[グザビエ・ピノン/セレクトラスマートジャパン]

規制機関「Eコントロール」が自由化を推進

 電力自由化が行われた2001年に、自由化への移行作業を管理する目的で「エナジーコントロールオーストリア」(通称Eコントロール)が設立された。Eコントロールがまず第一に行ったことは、送電オペレーションと発電オペレーションの分離である。すべての電力会社が公平に送電網が利用できるよう、送電網を持つ電力会社はその送電オペレーションを完全に分離独立させることが義務付けられた。

 この発送電分離の実現のために、電力会社は別会社を作ることで対応したのだが、これによりいくつかの問題が起こった。送電オペレーション会社が、どこの電力小売り会社の顧客かによって対応を変えるといった差別がその一例である。つまり、電力自由化以降も送電を行っていた電力会社の電気を引き続き使用する顧客を、新電力に切り替えた顧客より優先的に対応をしたりしたわけである。残念ながらこの問題は完全には解決はしておらず現在も課題となっている。

 このような課題も含め電力自由化に関する諸問題の解決をめざし、消費者への安全性・公平性を最大限保証するという目的のため、Eコントロールはオーストリアエネルギー市場の規制やルール作りに取り組んでいる。

Eコント―ルの行う業務

  • 託送料金の決定。送電利用のニーズに合わせて毎年更新
  • 引っ越し時の電気料金スイッチングと電気使用開始に関するルール作り
  • 電気の解約、切り替え、使用開始オペレーションの効率とスピードアップ

 加えて、Eコントロールはその機関内部に、調停委員会(正式名称:E-control Schlichtungsstelle)を設けており、消費者および各電力会社が現行のルールにおける矛盾点や問題、ルール違反であると思われる事項に関して申し立てができるようになっている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.