切り替えがあまり進んでいないのには、オーストリア人ののんびり屋な気質も考えられる。加えて、Eコントールが担っていた電力自由化の広報活動が、家庭レベルまで十分に行きわたっていないことも原因の1つに考えられる。もちろん、いくつかの対策は取られた。例えば、Eコントールオリジナルのオンライン電気料金計算システムの導入などだ。これを使えば、すべての電力会社の電気料金が比較できるというものである。送電料金と税金などのデータ提供はEコント―ルが提供し、そして電力会社にはこの計算システムに必要とされる電気料金のデータ提供が義務付けられた。
このようなツールの導入にも関わらず、相変わらずオーストリア人は電気の切り替えをあえてしようとしていない。大手新聞社はこのようなオーストリアの状況を取り上げ、“のんびり屋(怠け者)”のオーストリア人と称した。もちろん、電気・ガス会社の切り替えに対し、はたして本当にオーストリア人が怠け者なのか立証することはできないが、電力自由化から15年経過した現在でも非常に低い切り替え率であることから考えれば、容易にエナジー会社を切り替えるタイプの国民性ではないことだけは確かである。
一方、オーストリア人の貯金額は隣国に比べるとかなり高い。電力会社を切り替えることで、オーストリアでは平均的な家庭でも年間に最大918ユーロも節約(2016年10月現在)することができる。貯金好きのオーストリア人にとっては本来ならばかなりありがたい状況のはずなのだが、上記のように切り替え率は非常に低いままである。ちなみに2014年にはオーストリア消費者保護団体による団体契約のおかげで、やっとその切り替え率は3.4%まで増えた。
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