東日本にCO2フリーの水素が広がる、3地域で技術開発を加速自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年11月08日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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福島県では1万kW級の水素製造設備

 山梨県や北海道で始まったCO2フリー水素の活用プロジェクトは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2014〜2020年度に実施する技術開発事業の一環である。2016年度には6つのプロジェクトを対象に31億円の国家予算を投入する(図5)。この中には福島県で計画中の大規模な水素製造事業も含まれている。

図5 「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発」の対象プロジェクト。出典:NEDO

 政府は福島県の復興を目指して2016年9月に「福島新エネ社会構想」を策定した。その中で目玉のプロジェクトが、世界最大の1万kW(キロワット)級の水素製造設備である(図6)。風力発電などで作った電力からCO2フリーの水素を製造する大規模な設備を、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに稼働させる計画だ。

図6 「福島新エネ社会構想」の基本方針(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 このプロジェクトは東芝・東北電力・岩谷産業の3社が共同で推進する。水素の製造・貯蔵・発電装置を中核に、地域の電力系統を制御するシステムや水素の需給予測システムも開発する予定だ(図7)。製造した水素は東北エリアのほかに東京を中心とする首都圏にも供給することを想定している。計画が順調に進めば、東京オリンピック・パラリンピックで導入する燃料電池や燃料電池バスに福島県産の水素を利用できる。

図7 福島県で実施するCO2フリー水素の技術開発プロジェクト。PV:太陽光発電、WT:風力発電。出典:東芝、東北電力、岩谷産業

 すでに福島県内では再生可能エネルギーの電力から水素エネルギーを製造・供給する研究開発プロジェクトが始まっている。国の産業技術総合研究所が運営する「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」の中に実証設備を構築して評価中だ(図8)。この実証の成果を1万kW級の水素製造設備や水素輸送・貯蔵システムの開発に生かす。

図8 水素を製造・貯蔵・利用する実証設備(画像をクリックすると拡大)。MCH:メチルシクロヘキサン。出典:産業技術総合研究所

 東日本の3地域(北海道・東北・東京電力エリア)は西日本と比べて地域間の電力融通に制約が多い。再生可能エネルギーが豊富にある北海道と東北、さらに東京電力エリアに含まれる山梨県を加えて、今後の再生可能エネルギーの拡大には水素エネルギーの活用が重要な役割を果たす。2020年代には再生可能エネルギーとCO2フリー水素を組み合わせた地球温暖化対策が東日本を中心に全国各地へ広がっていく見通しだ。

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